利益1位の三井物産、巨額減損の住友商事と明暗 5大総合商社の2023年度決算は業界序列が変動
永野氏の分析では、ライバルの三菱商事は2022年度以降2年間で純利益に対する実質的な総還元性向が85%に上る。
キャッシュフロー創出力が高く、財務体質も同様に健全な三井物産は、経営判断で成長投資にも株主還元にも回せる資金枠の「マネジメント・アロケーション」5600億円を含め、追加の株主還元の余地が大きいと、永野氏は見る。
決算会見では「株主還元が少ないのではないか」との質問も飛んだ。堀社長は「手元にいろんな選択肢を残している。現時点ではこのレベルの還元で皆さんとキャピタル・アロケーション(資本配分)を共有するのが適切と判断した」と語った。
今年度は三菱商事、伊藤忠と三つどもえ
2024年度の利益の順位はどうなるのか。各社の計画数字を並べると、9500億円を予想する三菱商事が純利益トップへと返り咲く。
三菱商事の2023年度の純利益は前年度比18%減の9640億円だった。資源市況下落や前年度にあった不動産運用会社売却益がなくなったことに加え、オーストラリアの原料炭事業でコロナ禍以来の人手不足や天候不順により操業が落ち込んだことなどが主な理由だ。
2024年度も原料炭生産は伸び悩み、「2年間は辛抱」(中西勝也社長)の時期。利益面ではオーストラリアの2炭鉱の売却益や、連結子会社だったローソンの持ち分法適用会社化に伴う同社株式の再評価益が貢献する。ただ、それらの一過性利益を除くと、単純計算で純利益は7300億円の水準に落ち込んでしまう。
対する三井物産は9000億円を予想する。2024年度は鉄鉱石価格の下落を見込み、資産売却も一段落する。が、化学品や鉄鋼製品が回復したりエクアドルのエビ養殖事業が収益貢献したりするなど、むしろ実力値に近い数字といえる。
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