両親の自己破産で「奨学金225万」借りた女性の顛末 金銭的理由で志望校断念も、それでも求めた「大卒」

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「毎月の返済額は1万4000円〜2万4000円くらいでしたが、給料を20万円以上もらえていたのと、実家住まいだったので、特に苦労した記憶はありません。結婚後、残り2年間の返済期間があったのですが、もう早く返したくて数年前に繰り上げ返済しました」

「大卒」という称号を得るための奨学金

金銭的な事情で大学進学を諦めずに進学を果たし、就職氷河期を乗り越えて夢見ていた仕事にも就き、10年くらいの時間をかけて奨学金を返済した栗原さん。やはり、奨学金がなければ彼女の物語は始まらなかったと言えるだろう。

「結局、この社会では『大卒』という称号があったほうが、就職面では断然有利です。そういう意味では、夜間部の興味のない学部に無理して入学しましたが、卒業したことで私も『就職への切符』を手にすることができたと思っています。

とはいえ、10代の頃の一連のお金のない時期に関しては、今もコンプレックスを抱いていますね。それを克服するために、専門学校に通ったりして、スキルを磨いていた気がします」

充実した毎日を送る栗原さんだが、今でも「あの時、志望校に入ることができたら、自分はどうなっていたのだろうか?」と、悔やむこともあるという。

そのため、今の奨学金制度に関しては、家庭の状況にかかわらず、自分の進みたい道への教育を受けられる制度になることを願っている。

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「もっと学生たちの細かいニーズに合わせた、プランがいくつも用意してあるといいですよね。『奨学金は国公立に通う優秀な学生のためにある』という世間のイメージはいまだにあると思いますが、他方で私のように『将来返せるかはわからないけど、とりあえず託してほしい』という学生もいます。そのため、それぞれに奨学金という選択肢は残しておいてほしいんです。奨学金を借りることで、叶えられることもたくさんあると思います」

また、入学金の事前振り込みで入学を諦めた過去や、夜間部が現在、なくなりかけていることから、大学側に変革してほしい部分もいくつかあるという。

「今でこそ、入学金のために奨学金を一括で貸してくれる制度はありますが、それが20年前にあれば私の未来も変わったかもしれません。このように奨学金を貸すほうがフレキシブルに変化している時代のため、大学側にも学生一人ひとりに柔軟な対応を取ってもらいたいと思っています。

それと給付型奨学金が今は増えているとは聞きますが、学費以外でも金銭的に支援してくれる制度がもっと充実するといいですね。奨学金制度がより変わっていくことで、夢を叶えられる人がもっと増えるのではないかと思うんです」

本連載「奨学金借りたら人生こうなった」では、奨学金を返済している/返済した方からの体験談をお待ちしております。お申し込みはこちらのフォームよりお願いします。奨学金を借りている/給付を受けている最中の現役の学生の方からの応募や、大学で奨学金に関する業務に関わっていた方からの取材依頼も歓迎します。
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千駄木 雄大 編集者/ライター

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せんだぎ・ゆうだい / Yudai Sendagi

編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。奨学金、ジャズのほか、アルコール依存症に苦しんだ経験をもとにストロング系飲料についても執筆活動中。奨学金では識者として、「Abema Prime」に出演。編集者としては「驚異の陳列室『書肆ゲンシシャ』の奇妙なコレクション」(webムー)なども手掛ける。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)。原作に『奨学金借りたら人生こうなる!?~なぜか奨学生が集まるミナミ荘~』がある。毎月、南阿佐ヶ谷トーキングボックスにて「ライターとして食っていくための会議」を開催中。

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