月に50万円売る「魚の自販機」大ヒットの舞台裏 人口数十人の小さな集落に、客が途切れないワケ 

拡大
縮小

しかし、ここは市街地と市街地をつなぐ海沿いの国道で、車の往来は多いが、人家は極めて少ないエリア。鹿児島県垂水市の深港集落で、約27戸、人口50人に満たない小さな集落である。人口の少ない場所で、これだけレアな食材が豊富なラインナップで売られているのがなんとも不思議だった。 

一体なぜここに自動販売機を置いたのか、果たしてこの場所で儲かるのか、売れ筋商品は何なのか、24時間営業でどの時間帯の購入が多いのか、気になることをいろいろと運営者に尋ねてみた。 

運営しているのは鹿児島県垂水市の森水産。迎えてくれたのは、1代目(写真右)森正彦さんと2代目(写真左)森正秋さん。親子が中心になって営む家族経営の小さな養殖場だという。 

自動販売機のそばにある事務所にて話を伺った。桜島がよく見える気持ちのいい場所にある(筆者撮影)

自販機を設置したのは2023年3月4日で、置いてから1年ちょっと過ぎた頃である。発案して運用している森正秋さんが質問に答えてくれた。 

―自販機を置いたきっかけは? 

弊社は、家族経営の小さな養殖場で、海ぶどうとヒラメの養殖をメインで手掛けています。特にヒラメの養殖は1979年からずっとやっているのですが、昔は活魚で売れていたのがだんだん売れなくなり、1998年からは加工を始めてヒラメを半身にしてスーパーや量販店に卸すようにしていました。ところが、今度はコロナの影響で2020年頃からは注文が急に減ってしまい、このままではまずいなと感じました。 

そこで、企業向けに卸すだけでなく、個人向け直販にも挑戦しようと方向転換しました。最初は直売所を作ろうとしましたが、経費がかさむのでまずは気軽に始められる自動販売機で試すことにしました。うちで養殖しているヒラメと海ぶどうを中心に、地元のほかの業者さんの商品もその時々で販売しています。 

―なるほど。自社商品をメインで置いていたんですね。直売所と自販機で、経費はどのくらい変わるんですか? 

自動販売機なら設置費用込みで300万ぐらい。店舗を作ると小さくても1000万は超えてしまうので、だいぶ安く抑えられますね。大体、直売所の5分の1くらいの費用感でできました。さらに、自動販売機なら人手がいらないのが一番大きかったです。人手に関しては無人販売という選択肢もありますが、盗難の心配があるので、セキュリティ面でも自動販売機はいいなと思いました。 

多い日で一日の売り上げ約7万円、遠方から来る客も 

―この場所は市街地と市街地を結ぶ国道で車の往来は多いですが、人口は少ないですよね。なぜここに自動販売機を設置しようと思ったのですか? 

選んだ理由はシンプルで、うちの養殖場と加工場の裏にあって、自社の土地だからです。自動販売機のいいところは、店舗と違って場所移動ができることです。売れなければ人の多い市街地のほうへ移動すればいいと考えて、まずはここに置きました。結果、売れ行きがよかったので、移転しなくて済みました。商品の補充もすぐできるので便利です。 

次ページ一番の人気商品は海ぶどう
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【動物研究家】パンク町田に密着し、知られざる一面に迫る
【動物研究家】パンク町田に密着し、知られざる一面に迫る
作家・角田光代と考える、激動の時代に「物語」が果たす役割
作家・角田光代と考える、激動の時代に「物語」が果たす役割
作家・角田光代と考える、『源氏物語』が現代人に語りかけるもの
作家・角田光代と考える、『源氏物語』が現代人に語りかけるもの
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT