安すぎる大学の学費により日本社会が失ったもの 学生の経済的負担が小さいことは利点だが…
グローバル化の時代に国内の事情だけで学費を論じることはできません。まず世界の状況の確認から。世界の主要大学の1年間の学費は、以下の通りです。
アメリカやイギリスでは、受益者負担の考えから優れた大学ほど学費が高くなっています。一方ドイツでは、大半の大学で学費はゼロです。他にも北欧諸国など学費ゼロの国があり、東京大学の53万5800円が世界最安値というわけではありません。ただ、昨今の円安の影響もあり、日本は世界だけでなくアジアの中でもかなり安い部類です。
安価な学費で社会が安定
日本の大学の安価な学費には、良い点と悪い点があります。まず良い点は、何と言っても学生・親にとって経済的な負担が小さいことです。
アメリカでは、世界一高いと言われる学費が学生にとって過酷な負担になっています。アメリカの奨学金は給付型で、奨学金が受けられなかった学生の多くが教育ローンを借ります。金利が低い公的なローンは、親ではなく学生自身が借りる仕組みです。
そのためアメリカでは、学費を払えずに中途退学する学生が後を絶ちません。教育ローンの残高は、なんと1兆7700億ドル(約280兆円)に達します。卒業後にローンを返済できず破産する若者が増加し、大きな社会問題になっています。
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