安すぎる大学の学費により日本社会が失ったもの 学生の経済的負担が小さいことは利点だが…

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一方、日本でも、返済が必要な奨学金負担の問題はあるものの、アメリカに比べれば深刻ではありません。結果として、進学率が上昇し、教育の裾野が広がり、国民の学力が上がります。さまざまな格差が縮小し、安定した社会が実現します。

また、海外からの留学生にとっても、日本の大学の学費は魅力的でしょう。近年、国内の少子化を受けて、各大学とも留学生の獲得に注力しています。安価な学費は、留学生を確保し、大学の経営を安定させることにつながります。

優秀な研究者が日本に来ない

一方、あまり指摘されていませんが、安価な学費には悪い点もあります。一言でまとめると、研究が高度化しないという問題です。

近年、日本の大学の研究力の低下が顕著です。学術出版大手シュプリンガー・ネイチャーが昨年公表した理科系の大学・研究所の研究力ランキングによると、首位は中国科学院、2位はハーバード大学、3位は独マックス・プランク研究所で、日本勢では東京大学の18位(前年14位)が最高でした。

原因はいろいろあるでしょうが、やはり何と言っても“金”です。日本の大学は、学費収入が少なく、国からの運営補助金などに依存する脆弱な財政構造です。そのため、金のかかる先端研究はどうしても制約されます。また、金主である文部科学省の顔色をうかがわなければならないので、思い切った自由な研究ができません。

大学教授の平均月収は、国立大学45万7300円、私立大学46万8100円(文部科学省「学校教員統計調査<令和4年度>」)で、ボーナスを含めた年収は1000万円程度です。3000万円以上が当たり前、1億円プレイヤーも珍しくないアメリカとは比べものになりません。この薄給では、日本語の壁もあり、海外から高給で優秀な研究者を集めるのは困難です。

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