華厳滝で投身、明治期の学生の絶筆が与えた衝撃 絶筆「巌頭之感」は今も絵葉書で売られている

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東武日光駅から45分ほどバスに揺られて中禅寺温泉で降りると、華厳滝へは徒歩数分で辿り着く。平日の昼前でもバスは満員に近く、日本人よりも明らかに外国人のほうが多かった。温泉街の往来も同じ様子だった。

中禅寺温泉の通りには日光土産の店が軒を連ねていたので、その一軒一軒を回って「巌頭之感」の絵はがきを探すことにする。しかし、いずれの店にも目当てのものは置いていない。店主に在庫を尋ねてもピンとこない様子であしらわれるばかりだった。

唯一、ある老舗店の主人は、「50年くらい前までは売っていたけど、最近はとんと聞かないねぇ」と教えてくれた。いずれにしても店内で目当てのものが見つかる気配はいっさいしない。

「Misao Fujimura's WILL(Farewell Poem)」

その空気が急に変わったのは華厳滝の敷地内に入ったときだ。華厳滝には滝口近くから滝壺近くに100メートル垂直に降りる観光エレベーターがあり、上下に土産物店が数件建っている。

その一軒に入ると、レジから近い目立つ場所に当たり前のように「巌頭之感」が並べられていた。

官製はがきよりも大きい183×140ミリ大の厚紙に、例の写真と華厳滝のモノクロ写真が並べて印刷されている。華厳滝の右上には藤村操のポートレートも添えられていた。

藤村操 巌頭之感
華厳滝で入手した「巌頭之感」(筆者撮影)
藤村操 巌頭之感
裏面には詩の解説が赤文字で記されている(筆者撮影)

他の店でも同じデザインのものが売られており、価格は共通して税込み100円だった。売り方は店によってさまざまで、他の絵はがきと一緒にただ並べている場合もあれば、外国人観光客向けに「Misao Fujimura's WILL(Farewell Poem)」(藤村操の遺言、訣別の詩)、「You can google it...」(ググってね)など手描きしたポップで飾っている場合もあった。

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