「逮捕って何」と聞かれて正しく答えられますか 知っているようで知らない事件報道の裏側
話を万引犯に戻します。駆けつけたお巡りさんはニコニコ顔です。「ありがとうございます」「いえいえ……」「では、ちょっと署までご同行願えますか」「ちょっと待ってよ、何で私が警察に!?」。
刑事ドラマでは、署に同行されるのは犯人1人と相場が決まっています。しかし実は、泥棒を現行犯で捕まえて、お巡りさんに引き渡せば終わりではないのです。
これにはれっきとした理由があります。裁判が始まると、現行犯の場合でも、検察は裁判所に「現行犯人逮捕手続書」という書類を出さなければなりません。検察官はこの手続書に目を通してから公判に臨む必要があります。
手続書には逮捕について、そのとき、その場所の状況を詳細に書いておかなくてはなりません。そのため、逮捕した人間にもしっかりと事情聴取する必要があるのです。
緊急逮捕も逮捕状はいらない
通常逮捕と現行犯逮捕の違いをお話ししてきましたが、このほかに緊急逮捕というものがあります。緊急逮捕も逮捕状がいりません。
ある日の深夜、民家が全焼しました。警察官が駆けつけたところ、目撃者が現れました。
「どう見ても中学生くらいの、髪を赤く染めた女の子が民家のそばから出てきたと思ったら、走っていなくなってしまった。すると20秒ほどして、女の子が出てきたあたりから火の手が上がったんです」
逃げられてしまったから現行犯ではありません。しかし、深夜に中学生くらいの髪が赤い女の子なんて、そうそういるものではありません。はたして数時間後、近くの繁華街を管轄する警察署から「赤い髪をした女の子が歩いていたので職務質問したところ、ライターを持っており、『民家に火をつけた』と話したので、逮捕しました」と連絡がありました。
この場合、逮捕状はありませんが、十中八九この子が犯人だろうという警察官の判断で例外的に逮捕することができます。これが緊急逮捕です。
このほかにも、再逮捕、別件逮捕、あってはいけないことですが誤認逮捕などがあります。逮捕と一口にいっても、その形は本当にさまざまなのです。
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