「逮捕って何」と聞かれて正しく答えられますか  知っているようで知らない事件報道の裏側

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

話を万引犯に戻します。駆けつけたお巡りさんはニコニコ顔です。「ありがとうございます」「いえいえ……」「では、ちょっと署までご同行願えますか」「ちょっと待ってよ、何で私が警察に!?」。

刑事ドラマでは、署に同行されるのは犯人1人と相場が決まっています。しかし実は、泥棒を現行犯で捕まえて、お巡りさんに引き渡せば終わりではないのです。

これにはれっきとした理由があります。裁判が始まると、現行犯の場合でも、検察は裁判所に「現行犯人逮捕手続書」という書類を出さなければなりません。検察官はこの手続書に目を通してから公判に臨む必要があります。

手続書には逮捕について、そのとき、その場所の状況を詳細に書いておかなくてはなりません。そのため、逮捕した人間にもしっかりと事情聴取する必要があるのです。

緊急逮捕も逮捕状はいらない

通常逮捕と現行犯逮捕の違いをお話ししてきましたが、このほかに緊急逮捕というものがあります。緊急逮捕も逮捕状がいりません。

ある日の深夜、民家が全焼しました。警察官が駆けつけたところ、目撃者が現れました。

「どう見ても中学生くらいの、髪を赤く染めた女の子が民家のそばから出てきたと思ったら、走っていなくなってしまった。すると20秒ほどして、女の子が出てきたあたりから火の手が上がったんです」

逃げられてしまったから現行犯ではありません。しかし、深夜に中学生くらいの髪が赤い女の子なんて、そうそういるものではありません。はたして数時間後、近くの繁華街を管轄する警察署から「赤い髪をした女の子が歩いていたので職務質問したところ、ライターを持っており、『民家に火をつけた』と話したので、逮捕しました」と連絡がありました。

この場合、逮捕状はありませんが、十中八九この子が犯人だろうという警察官の判断で例外的に逮捕することができます。これが緊急逮捕です。

このほかにも、再逮捕、別件逮捕、あってはいけないことですが誤認逮捕などがあります。逮捕と一口にいっても、その形は本当にさまざまなのです。

三枝 玄太郎 フリーライター、元産経新聞記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

さいぐさ げんたろう / Gentaro Saigusa

1967年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。1991年、産経新聞社入社。静岡支局、東京社会部(警視庁、国税庁、国土交通省などを担当)、大阪社会部(大阪国税局担当)、東北総局次長などを経て、2019年退社。WEB編集チームとしてネット記事制作の専門部署にも在籍した。著書に『十九歳の無念』(角川書店)。現在はYouTube「三枝玄太郎チャンネル」で日々のニュースの解説動画を配信。インターネット番組「文化人放送局」レギュラー出演中。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事