「逮捕って何」と聞かれて正しく答えられますか 知っているようで知らない事件報道の裏側
逮捕状とは、刑事ドラマでよく「おい、○○(容疑者の名前)、お前に逮捕状が出ている」なんて言って目の前に突き出す、あの紙ですね。
ある県で殺人事件があったとしましょう。警察が捜査を開始したところ、Aという人物が被害者の自宅周辺の防犯カメラに映っているのを見つけました。裏付け捜査を進めると、Aの指紋が現場から検出されます。
「こいつで間違いない」。そう思っても警察はAを逮捕できません。逮捕状がないからです。逮捕状とはAの氏名、住所、罪名(この場合は殺人罪ですね)、被疑事実の要旨などが書かれた紙で、これを司法官憲つまり裁判所(地方裁判所か簡易裁判所)に行って発布してもらわなくてはなりません。家宅捜索するときも同じで、裁判所から捜索令状を発布してもらわなくてはいけません。
逮捕状を示して逮捕することを「通常逮捕」といいます。メディアで報道される事件は、たいていがこの通常逮捕です。
あなたも「逮捕」ができる
ところで、先ほどの憲法33条の「何人も令状がなければ、逮捕されない」という一文をもう一度よく見てみてください。何か気づきませんか?
実はこの文には「誰に」という部分が抜けているのです。
どういうことでしょうか。これは、今、この本を読んでいる皆さんも泥棒を逮捕することができるという意味なのです。
あなたはコンビニエンスストアで万引をする男を目撃してしまいました。男はそのまま出て行ってしまいそうです。警察を呼びたいところですが、あたりに交番はない……。そこで、持ち前の正義感を発揮し、店から出たところで男に声をかけます。
男はびっくりした顔であなたを見ましたが、観念して「やりました」と言い、かばんに入れた商品を見せました。この場合、犯罪を見つけたあなたが男を逮捕することができます。逮捕状は必要ありません。これが「現行犯逮捕」です。警察官以外の人が逮捕しているので「常人逮捕」という言い方をすることもあります。
現行犯逮捕は憲法では例外の扱いですが、実際には意外に多いのです。
1981年の犯罪白書におもしろい統計が載っています。警察庁が全国で1979年1月から1980年6月までの間に全国で発生した金融機関強盗188件を調べたところ、検挙された128人の内訳は、警察官による現行犯逮捕が32.8%、一般人による現行犯逮捕が25.8%もあり、合わせて6割にも達しています。
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