日立、グループの再編に成功した「ただ1つの理由」 「必要な会社は残し不要な会社は売る」ではダメ
グループから去るにしても残るにしても、社員を含めたグループ会社のみなさんの大半が納得し、胸を張ってそれぞれの道を進んでいけるような方法を追求しました。そして、上場会社の将来の方向性を決めた段階で取締役会に諮り議論してもらいました。
たとえば、日立建機の社長だった平野耕太郎さんとは、日立建機がグローバルに成長するために何をすべきかを繰り返し議論しました。日立建機は油圧ショベルや鉱山向けの大型ダンプトラックなどを製造販売する会社です。
「これからの時代は、建設機械は所有せずにリース会社から借りて使う企業がいっぱい出てくるだろう」
「日立建機としては、金融機関などもパートナーとして、リースビジネスを展開したい」
「機械は日立建機の資産にするということ?」
それだと今でも10兆円ある日立の連結バランスシートの資産がさらに重たくなってしまう。Lightじゃない。私のめざす方向とは違います。
ただ、日立建機の油圧ショベルの遠隔監視ソリューションなどは正しくIT・OT・プロダクトを組み合わせたルマーダソリューションです。ほかの多くの製品にも日立グループの電気部品を使っています。資本関係は残しておいたほうが双方にとって得策です。話し合いの結果、日立が51%を保有していた日立建機の株式の一部を売却して保有率を25%とし、日立建機は日立グループを離れるという結論に至りました。3年近くかけ、世界で戦える形を議論した上での結論でした。
闇夜で刺されることはない
同じように、ほかの上場会社の社長たちとも議論を重ねました。その結果、2009年には22社を数えた上場子会社のうち、社会イノベーション事業に親和性の高い日立ハイテクや日立情報システムズ、日立ビジネスソリューションなどの7社は合併か完全子会社化でグループ内に残り、プロダクト中心の日立工機、日立化成、日立金属などの計15社はグループを去ることになりました。
グループ企業の株式を売却し、グループを去ってもらうのは、心情的には辛いことでした。グループ会社に転籍した先輩も大勢います。どの会社も業績自体は悪くありませんでしたから「なぜ、東原は業績のいい会社を売ったりするのか」と反対するささやきも聞こえてきました。
逆なのです。業績がよいからこそ、今のうちに売るのです。サービス提供事業への重心移動を加速していった日立グループに残ったままだったら、必要な投資や戦略の実行ができず5年後には業績が落ちていったかもしれません。
恨んでいるOBの方々もいるかもしれません。しかし、闇夜で刺されることはないでしょう。日立のことだけではなく、双方の未来にとって最善の策を模索した結果だったからです。
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