リーダーに必要な「しんがりの思想」とは? 鷲田清一氏が説く「政治リーダー論」

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──市民の基礎体力が落ちていて、真の意味での専門家もいない。このような時代のリーダーに必要なものは……。

今、国会では安全保障関連法案の審議が続いています。議論を聞いていても、安倍さんは野党を説得する気があるとは思えません。煙に巻こうとしているように思えます。

情理を尽くして説く。政治は説得の術です。

右肩下がりの時代、特に説得が必要です。50年、100年先のことを考えると、耳の痛いことを今、言わなければなりません。

未来世代の視点を持ち、今の優先順位をつける。そして説得する。引っ張っていくリーダーではなく、社会全体への気配りや目配りができ、退却戦もいとわない。それが今の時代に求められるリーダーだと思います。「しんがり」を務めるリーダーの役割です。

事が起こり、請われれば 一差し舞える人物になれ

──われわれ個人としてはどう考え、生きるべきでしょうか。

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昔は町内会も企業も、個人と国家、市場の間で機能していました。中間集団の役割を果たしていました。欧米ではいまだに中間集団として教会の力は強い。中間集団は、対立する二つの機能のきしみ合いを調整する場所だったのです。これが消失した。結果、個人が国家や市場に対してむき出しになってしまった。グローバル市場など、もはや個人がコントロールできるものではありません。

若い人の間で、Iターン、Uターンが増えています。グローバル市場の濁流から脱出しようという動きではないでしょうか。中間集団の庇護の力が弱まり、孤立したまま社会にむき出しになっている個人の自己防衛手段ともとらえられます。

田舎に戻り、最低限コントロール可能なサイズの生き方をし、ネットワークを分厚くする。ポジティブな生き方だと思います。

福沢諭吉は、人民は「いざとなったら『主(あるじ)』に戻れる可能性を担保しておけ」という意味のことを言っています。そういう意味ではIターン、Uターンは「押し返し」の動きといえます。押し返しとは新しい責任の感覚です。世間から問い詰められるのではなく、地べたから立ち上がる「責任」です。

「しんがり」の務めと「押し返し」の行動。梅棹忠夫さんの言葉に「請われれば一差し舞える人物になれ」というのがあります。何かあれば、一差し舞う覚悟が大事だと思います。

週刊東洋経済編集部
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