高橋源一郎、「ぼくらの民主主義」に込めた思い

「民主主義」をタイトルにしたワケ

小説家が論壇時評を書く意義とは(撮影:今 祥雄)
朝日新聞に月1回連載された論壇時評に加筆して新書化。課題の解決に必要な柔らかい思考がとらえる「ぼくらの民主主義」とは。

──論壇時評の4年分48本を1冊にまとめました。

今まで、論壇時評の担当の最長記録は3年半。この4月で4年を超えて、それを上回った。最初から材料として論壇誌にこだわるつもりはなく、その時々にみんなの関心があることで意味があるものを取り上げるスタイルで、ずっとやってきた。

文章によって一人称を使い分ける

──始まりが2011年4月。

いきなり3・11。あれだけの大きな出来事から始まり、ある意味で見切り発車だった。掲載が毎月最終木曜日の朝刊で、締め切りは事実上月曜の明け方。土日が使える。準備こそもっと前からやっているが、極端なことを言ったら日曜日に何かあればそこまでは入る。

──テーマ選びはどのように。

以前だったら1年に1回あるかどうかの大事件が、今では毎月のようにある。それによって大きな「G(重力)」がかかって日本という列車は脱線しそうで、書くべきことはいろいろある。その中からいちばん大切と思われるものをテーマに選ぶ。心がけたのは1回ごとにまとまった読み物にすることだ。脈絡なく並列するのはやめる。小説として書く文章より細部まで丁寧に書いている。点の打ち方、改行、語句の直しを最後まで妥協しない。一つの作品に仕上げてやろうと思ってやっている。

──文中の一人称も、ぼく、わたし、おれを使い分けていますね。

文章の中身に合った一人称を使う。少し親しげな感じでやりたいときはぼくで、オーソドックスなときはわたし。特に理由があるとき、2回ぐらいだったと思うが、おれを使う。もちろん内容すべてが個人的な意見だが、特に個人的見解が強くにじんでいるときは、おれにした。制服は脱いで私服で書いているという感じだ。わたしたちやぼくたちも使う。その時々にふさわしいと思う人称表現を選んでいる。

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