機能性食品は「根拠の質が低い」とわかるのが長所 健康食品業界38年の識者が指摘「制度の功罪」

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機能性表示食品の普及により、自分に必要ない商品を買う人は減っていると思う。例えば血糖値に対する機能が書いてあれば、関係のない人は買わない。いわゆる「健康食品」しかなかった時代には、「何にでも効きます」「これを飲んでおけば安心」というイメージの商品が多かった。

大手中心に、企業が研究開発へ投資するようになったという功績もある。産業の発展や雇用の確保などに寄与している。企業が利益を出していれば税金も収めているだろう。社会貢献になっている。

――功績はあれど、安全性の面で消費者からの信頼は揺らいでいます。

2013年12月、この制度の創設に関する検討会で最初に言及されたのが「安全性の確保」だった。その後に、機能性表示の科学的根拠や消費者への情報提供について議論されている。制度設計の時点で、まず安全性の確保から議論が始まったことは忘れてはいけない。

しかし、この約10年で消費者からの信頼は揺らいできている。事業者側が若干いいかげんになってしまっていることが理由の1つ。届け出された科学的根拠の質が低いという批判は多く、広告で主張されているほどのエビデンスはないという例もある。この制度では自社でエビデンスを作ることができるため甘くなりがち。第三者から質の低さを指摘されても仕方ない。

だが小林製薬の件は機能性表示食品制度に起因するものではなく、日本の食品安全行政全体に関わる話。そこはわけて考えなければいけない。

国が安全性を評価するのが世界基準

――機能性表示食品の制度自体に問題点はありますか。

制度開始時点で、安全性の評価については問題があった。国内で販売実績や食経験がない成分については、国が安全性を評価するのがグローバルスタンダードだ。アメリカのダイエタリーサプリメント制度では、新規原料(New Dietary Ingredient、NDI)を含むサプリメントを販売する場合、発売の75日前までにFDA(アメリカ食品医薬品局)に届け出ることになっている。そしてFDAが新規原料を審査する。

つまり安全性の評価は企業任せではなく、国が関与する。EUやオセアニアにも新規原料の概念はある。一方で日本にはこの概念がなく、審査する仕組みもない。そんな中で機能性表示食品制度が立ち上がり、企業が安全性を担保する仕組みになった。

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