なぜ人々は21世紀に一段と結婚しなくなったのか それは近代資本主義がもたらした必然的な帰結

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19世紀的な価値観の社会においては、結婚は必須だった。社会から、世間から、家から、強制された。しかし、今や義務ではない。

社会的な義務でない場合、結婚する理由はかつては経済的理由だった。女性は現金を稼ぐ機会が限られていたから、稼ぎのある(または資産のある)男性と結婚する必要があった。

男性は世間から結婚しないと一人前でないと見られていたから、社会的に成功するためには、結婚する必要があった。だから、結婚が義務ではなくなった昭和においても「必需品」であった。

しかし、それは平成では崩れ、結婚は「選択肢」となった。するかしないか、選べるようになったのである。「なくても生きていける、でも、あったらもっと幸せかもしれない」。人々は、幸せを増やすために結婚するかどうか考えるようになったのである。それまでは生きるための必需品だったから、これは大きな変化だった。これにより婚姻率は低下を始めた。

しかし、離婚率の上昇のほうが顕著だった。それまでは義務あるいは必需品だったものがそうでなくなったので、彼ら(彼女ら)は「結婚していない状態」を選択したのである。

しかし、21世紀に入って婚姻率の低下は加速した。その理由は何か。

結婚は「必需品」から「ぜいたく品」に変わった。しかし、「ぜいたく品」にも2種類のぜいたく品がある。それは、「ハレ」の日のぜいたく品と、「ケ」におけるぜいたく品である。結婚式はハレの日である。しかし、結婚生活は日常だ。

現代における日常の「ぜいたく品」とは何か

現代における日常の「ぜいたく品」とは何か。これが現代資本主義の本質である。すなわち、現代資本主義における経済成長とは、日常におけるぜいたく品の膨張過程であるからである。

資本主義が1492年のクリストファー・コロンブスのアメリカ大陸到達に象徴されるように、社会経済の流動化により始まった。その後、略奪などによる資本蓄積、それらの争奪戦という戦争を経過する中で、第1次産業革命が起き、商品市場化が進むが、経済成長は目立っては起きず、それは内燃機関と電気による第2次産業革命まで待たなければならなかった。

そして、第3次産業革命といわれる現代のコンピューター、IT、AI革命は、第2次産業革命ほどの生産性の向上をもたらしていない。生活の変化も19世紀後半から20世紀前半(アメリカにおいて。欧州は少し遅れ、日本はさらにその後)ほどではなかった。

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