「西友」が北海道・九州から撤退する納得の理由 業績不振ではなく企業価値の回復が背景に

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西友といえば、かつて国内屈指のスーパーとして名をはせたものの、2000年代初頭の小売業大再編期、属していたセゾングループが経営破綻に追い込まれたこともあり、世界最大の小売業ウォルマートの傘下に入っている。当時は、すわ黒船襲来と業界を震撼させたのだが、結果的には2021年にウォルマートが、株式の65%を投資ファンドであるKKRに、20%をネットスーパーで提携していた楽天グループに売却、事実上、日本から撤退となった。

その後、2023年には楽天は保有株式をKKRに売却したため、現在はKKR85%、ウォルマート15%という資本構成となっている。いずれにしても、西友は投資ファンドがその大半の株式を持っている会社だったのであり、それは西友がいつかは事業会社に売却されることになる、ということを意味する。

ファンドが小売業M&Aの買い手として登場の理由

ざっくりいえば、投資ファンドが、小売業M&Aの買い手として登場するのは、当該企業の店舗網を一括で買ってくれる事業会社がいなかった場合だと思えばいいだろう。スーパーを国内に全国展開している企業グループというと、実は、イオンかPPIH(ドン・キホーテの運営会社)ぐらいしかない。

つまり、限られた買い手候補と価格などの条件で合意できなければ、売ろうにも買い手不在となる、ということだ。一般的には物流効率の観点から、同じ地域か、隣接する地域の事業者しか買い手にはなり難い。そのため、店舗網を地域ごとに分割して、地域ごとに買い手を探して順番に売っていくということが必要になるのだが、それを業として引き受けるのが、投資ファンドなのである。

ファンドは株式の大半を保有することで、企業としての西友の経営権を握り、ファンドが選んだ経営陣によって、事業が高収益を産み出す事業構造に変えていく。このためにKKRは敏腕経営者として名高い大久保恒夫社長を招聘したのである。

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