「水産特区」の是非、震災復興案を巡り対立する県と漁協
政府の東日本大震災復興構想会議の第一次提言に盛り込まれた、「水産特区」構想をめぐり、被災県の漁協が猛反発している。
全国漁業協同組合連合会(全漁連)は7月6日、都内で水産特区構想に反対する集会を開催した。
「地元漁業者主体の法人が漁協に劣後しないで漁業権を取得できる」ことを求めた第一次提言について、「一つの漁場に二つの管理主体が存在することになる。操業上の紛争は必至だ」(服部郁弘・代表理事会長)と主張。
被災県からは「地域の意向を踏まえない特区導入は容認できない」(岩手県漁業協同組合連合会の大井誠治・代表理事会長)、「過去の例でも企業はいったん魚価が下がればすぐ撤退する」(宮城県漁協の阿部力太郎・代表理事理事長)と、強硬な反対意見が示された。
水産特区が提言に記されたきっかけは、5月10日の同会議で宮城県の村井嘉浩知事が提出した案だ。
宮城県は東日本大震災の津波で、142港ある漁港すべてが被災するなど、漁業は全国最大の被害を受けた。もともと約1万人いる漁業就業者の半数が60歳以上で、震災以前から担い手不足にも悩んでいた。
そうした状況を踏まえ村井知事は、水産特区創設による漁業再生を提案。全国一密集度の高い漁港の機能を3分の1へ集約するほか、経営基盤が脆弱な個人の漁業継続、生産から加工・販売までが一体の新たな経営組織の設立・導入に向け、民間資本の参入を促す重要性を訴えた。