しかし、過去の年ごとの開花日のデータを見てみると、「今年が遅かった」のではなく、「ここ数年が早すぎた」ことがわかるでしょう。こちらのデータをご覧ください。
●ソメイヨシノの年ごとの開花日(東京)
※外部配信先では図を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください
このデータを見てみると、直近30年程度の間に、今年よりも開花の遅かった3月30日、31日開花の年が7年間もあることがわかります。また、2020年、2021年、2023年はすべて3月14日開花となっていますが、これは気象庁が観測を始めた1953年からのデータの中でも一番早い日付です。
ちなみに、観測史上最も開花が遅かったのは1984年(昭和59年)であり、その年は東京での桜の開花は4月11日だったようです。昨年の開花よりも1カ月近く遅かったことになります。
桜の開花は早くなってきている
このようなデータや、10年ごとの開花日の平均を見てみてもわかるとおり、明らかに桜の開花時期は早くなってきているのです。桜が「入学式」のものから「卒業式」のものへと移り変わっているという言説も、このデータを見ると納得できるでしょう。
この「桜の開花時期の繰り上げ」は、長期的に見ると大きな問題になりうるのです。具体的には、日本各地で桜が満開にならなくなる、もっと言えば、一部の地域で桜が開花しなくなる可能性が生じるのです。今回はこの問題について、この連載記事のテーマである「数学」も用いながらデータをひもといていきましょう。
おそらくこの記事を読んでいる多くの人は、開花期間が変化している要因は「地球温暖化」にある、という事実をどこかで聞いたことがあるでしょう。もしニュースなどで聞いたことがなかったとしても、なんとなく想像できることだと考えます。しかし、具体的に地球温暖化が桜に与えている影響はあまり知られていません。
今回は、地球温暖化が桜に与えている影響をいくつかあげて数学的に解明しながら、どのように日本の桜が危機に直面しているのかを考えていきましょう。
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