これまでWOWOWやスカパー!の競争優位性を保ってきたのは、大型スポーツコンテンツだった。現在もWOWOWはサッカーUEFAチャンピオンズリーグなどを、スカパー!はプロ野球の公式戦全試合を放送している。
しかし最近はこのスポーツ領域で、配信サービスを交えた競争が激化。動画配信業界の関係者は「コアのスポーツファンはお金を払うことに対する抵抗が小さく、会員を獲得しやすい。そのため今は配信各社がスポーツに力を入れている」と話す。
U-NEXTは昨年3月に韓国のスポーツ配信サービスSPOTV NOWと提携し、直近ではネットフリックスもプロレス団体「WWE」との独占配信契約を締結した。こうした流れを受け、スポーツファンを中心に有料放送から配信への顧客流出が加速しているようだ。
WOWOWは2023年度の期初段階において、契約件数の純減傾向に歯止めをかける計画を発表していた。しかし昨年10月には早々にこの計画を撤回し、通期業績予想も下方修正。4月2日に発表された月次情報によると、2023年度の契約件数は、約246.7万(前期末比3.6%減)となった。
会社全体の業績も売上高755億円(前期比2.1%減)、営業利益9億円(同72.1%減)の減収減益に沈む見通しで、会社関係者は「投資家に向けて、簡単に『契約件数は底打ちする』と言いづらい環境になっている」と漏らす。
スカパー社長「会員数は決して増えない」
同じくスカパー!も、2023年度の契約件数は4.6%減に落ち込んだ。だが、番組制作費を積み増すなどして反転攻勢にもがくWOWOWに対し、スカパー!の受け止め方は若干異なっている。
「今後の会員数は減る一方で決して増えたりはしない。見栄を張っても仕方がない」
そう話すのは、スカパーJSATホールディングスの米倉英一社長だ。米倉社長は「『(スカパー!を運営する)メディア事業が会社の成長ドライバーになる』だとか、『100億の利益を目指す』などとは口が裂けても言うつもりはない。できるわけがない」と断言する。
一見、白旗をあげたようにも映る発言だが、米倉社長が「われわれはそもそも放送会社ではない」と話す通り、これにはスカパーJSAT固有の事業構造が大きく関係している。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら