「低迷WOWOW」と「最高益スカパー」分かれた明暗 苦境の有料放送で契約件数はともに続落だが…

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スカパーJSATは2007年、衛星放送のスカイパーフェクト・コミュニケーションズと、衛星の保守・運営を行うJSATが経営統合して誕生した。2008年には、JSATの競合であった宇宙通信を買収し、3社が合併している。

「われわれは放送会社ではない」との認識を示したスカパーJSATの米倉社長(撮影:今井康一)

2022年度の通期実績を見ると、売上高1211億円のうち、宇宙事業が占める割合は47%だが、営業利益223億円に占める割合では83%にまで達している。有料放送であるスカパー!の知名度の高さからメディア事業に注目が行きがちだが、その実態は宇宙事業の会社なのだ。

足元では、船舶や航空機などで使用されるWi-Fiの提供などのほか、世界的な安全保障需要の高まりを受けた官公庁向けのサービスで業績を伸ばしている。宇宙事業の拡大により、2023年度は過去最高益を更新する見込みで、株価も今年3月に過去最高値を記録した。低迷するWOWOWとは、まさに対照的な状況といえる。

業界からはスカパーへ不満の声も

宇宙事業の収益のうち、衛星放送向けの回線提供が23%にまで低下する中、株主からは「衛星放送はやめたらどうか」という声も上がるほどだという。ただ、米倉社長はあくまで「衛星放送がなくなることはない」との認識を示す。

「会員数が100万人に減っても、メディア事業で利益を出せる構造にしていく」。米倉社長はそう強調し、現在は採算が取れている目玉のプロ野球全試合中継についても、赤字になったときには撤退も辞さない意向であると明かした。

有料放送は採算重視で背伸びせず、宇宙事業による成長のビジョンを明確化するスカパーJSAT。もっとも、こうした同社の姿勢に対し、スカパー!のプラットフォームを通して番組を提供する放送事業者の間では不満の声も出ている。

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