同様に計算すれば、現状投影シナリオの医療費がその他要因で年率2%増加するケースでは、2019年度から2060年度にかけて医療・介護費は対GDP比で7.9%ポイント増加するから、対国民所得比では約11.0%ポイント上昇して、国民負担率は55.2%に達すると予想される。
これは、実質成長率が低い現状投影シナリオである。他方、それより実質成長率が高い長期安定シナリオではどうか。
同様に医療費増加について2つのケースを想定しており、2060年度の医療・介護費の対GDP比は、医療費がその他要因で年率1%増加するケースでは10.5%(2019年度比2.3%ポイント上昇)、年率2%増加のケースでは12.7%(2019年度比4.5%ポイント上昇)と推計している。現状投影シナリオよりも低くなっている。
先と同様に、長期安定シナリオでも国民負担率換算にすると、2060年度には、年率1%増加のケースでは47.4%、年率2%増加のケースでは50.5%となる。そうしたインパクトである。
効率化と負担見直しで医療介護費8%台をキープ
国民負担率を上げないようにするには、医療・介護費で、いかに工夫してその費用の増加を吸収するかがカギとなる。
内閣府の長期試算では、医療介護分野でのDXの活用などによる給付の適正化・効率化、地域の実情に応じた医療・介護提供体制の構築、高齢世代の自己負担割合の引き上げなどによる負担構造の見直しによって、医療高度化などその他要因で年率1~2%増えるかもしれない医療・介護費の増加を吸収することを期待している。
それが実現できれば、長期安定シナリオでは、医療・介護費の対GDP比を、2019年度から2060年度にわたって、8%台にキープできる姿を示している。つまり、国民負担率が、医療と介護の要因によって上がるということにならないようにできるわけである。
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