税収の増加が顕著だ。最近はインフレによる効果が強い。この結果、財政規律が弛緩し、必要性の疑わしい施策が行われている。本来は、将来の高齢化社会に備えた財政運営が不可欠だ。昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第110回。
数年間の税収の増加が顕著
2024年度の税制改正では、所得税の減税が行われる。これは、妥当性について多くの疑念が提起された政策だ。それにもかかわらず減税が行われるのは、この数年間の税収の増加が顕著という背景があるからだろう。
財務省の資料(税収に関する資料、一般会計税収の推移)によれば、2023年度の一般会計税収額(補正後予算額)は69.6兆円だ(注1)。2022年度、2021年度(決算額)は、71.1兆円と67.0兆円であり、それまで数年間には50兆円台、多くても60.8兆円(2020年度)であったのに比べると、大きく増加している。
一般会計税収のこれまでの推移を見ると、1990年度から2005年度ごろまでは増減を繰り返していたが、全体として減少気味だった。
ところが、2009年度に38.7兆円のボトムとなり、その後は増加に転じた。2014年度には消費税の増税が行われ、税収が一挙に増えた。2016年度以降は、消費税に加え、所得税、法人税も順調に伸びた。これは、この当時の経済が、順調に成長していたからだ。
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