日本人は「国民負担」の増加にもっと怒っていい 税収増加で財政規律が弛緩している

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日本の場合にも、国民負担率が上がったのは、社会保障費の影響が大きい。今後、高齢化社会はさらに進行する。2025年には団塊世代が75歳以上となり、高齢化率はますます高まる。高齢者を支える現役世代の人口が減少するため、増税や社会保険料の値上げが必要になるだろう。これは、先のような自然増ではとても賄えない。

以上のように困難な状況が将来に予想されるにもかかわらず、実際の予算では、バラマキが行われている。国債を含めた潜在的国民負担率を財務省が計算している(財務省、国民負担率(対国民所得比)の推移)。これでみると、2022年度は61.1%、2023年度は53.9%であり、日本はすでにヨーロッパ並みだ。

このように、税収増にもかかわらず、国債を増やした。コロナが異常な事態であったために、異常な財政支出が容認されてしまった面がある。しかし、定額給付金や雇用調整助成金の特例措置などが本当に必要だったのか、それがどのような効果をもたらしたかの検証が必要だ。

2023年補正予算でも、必要性の疑わしいバラマキ的施策が行われている。基金がいくつも設立されているが、これらは、税収が順調なうちに、とりあえず支出権を確保しようとする動きのようにも見える。税収が増えているために、財政規律が弛緩している可能性がある。

公平な税制確立の必要性

必要なことは、支出の見直しだけではない。税制の見直しも、不可欠の課題だ。本来であれば、 インフレが生じたときに自動増税が生じないように、税率をどう調整すべきかが、考えられなければならない。とくに所得税率は累進制なので、これが重要だ。

所得税減税をするのであれば、それに先だって、この点に関して十分な検討が必要だった。実際に行われる定額減税は、あまりに粗雑な考えに基づくものといわざるをえない。

負担率が高まれば、公平の確保は極めて重要だ。

現在の日本でとくに問題なのは、資産所得と 政治資金に対する課税だ。いずれも、社会的な強者が、不当に優遇されている。

いま、パーティー収入のキックバックが問題となっている。この報道に接して、政治資金はなぜ非課税なのかと、多くの国民が怒りを抱いたに違いない。こうした不公平な制度をそのままにして、負担だけが際限もなく増えていく社会は、絶対に阻止しなければならない。

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野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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