65歳以降も学び続け元気な人と学ばない人の差 記憶力の衰えでなく好奇心の衰えこそが大問題
歴史の学習も同様です。外国の町や日本の地方の町を訪れると、興味が湧き、その地の歴史を調べたくなります。そして、歴史を知ることで、旅行がさらに楽しくなります。
アイルランドの歴史を知っていると、アメリカ映画の理解も深まります。アメリカの映画業界にはアイリッシュ・アメリカンが多いからです。『風と共に去りぬ』、『黒水仙』、『静かなる男』、『ミリオンダラー・ベイビー』などは、アイルランドの歴史を知らなければ理解できないでしょう。
バレエも同じで、踊っているバレリーナが誰なのか知っているか否かで、観る楽しさは大きく変わります。数年前に制作されたDVDで、今では世界的なバレリーナがグループの一員として踊っているのを見つけたりすると、非常に楽しいものです。
「無知であることのコスト」を痛感した私の経験
私自身、知識がないために、貴重なチャンスを有効に活用せず無駄にした経験もあります。今でも後悔しているのは、タキシラ遺跡を訪れた時のことです。
パキスタンの首都イスラマバードで講演する機会があり、その際に訪れたのですが、タキシラ遺跡がガンダーラ遺跡の一部であることを知らず、ただぼんやりと見てしまいました。
日本に帰った後で、これがガンダーラ遺跡だったことを知り、地団太を踏みました。ガンダーラに行けることなど、もう二度とありえません。ゲリラが出没する地域に、銃を持った護衛つきで、イスラマバードから一日かけて行ったのですから。
「豚に真珠」そのもの。「野口悠紀雄にガンダーラ遺跡」と自嘲したくなります。絵画においても同様です。フィレンツェのウフィツ美術館やパリのルーブル美術館には何度も訪れたのですが、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品については、「受胎告知」と「モナリザ」にしか注意が向いていませんでした。
その結果、「東方三博士の来訪」、「岩窟の聖母」、「キリストの洗礼」などを見逃してしまったのです。美術館を訪れた時には、これらがいかに偉大な作品であるかを知らなかったからです。「ルーブルと言えばモナリザだけ」とは、恥ずかしい限りです。
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