出版業界が不況なのは「読者を見てない」から? 読者に寄り添えば、今でもブームは生み出せる

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もちろん中身も大事だし、充実した中身があってこその書籍であることには間違いない。しかし、それと同じぐらいに、そのデザインもまた重要だろう。

ブルーライト文芸のように、現代の人々に「綺麗だな」と思わせることで、書店空間への導線ができるのであれば、まさにそれは書店にとっても、出版社にとっても幸せなはずである。

ブルーライト文芸から見えること

もちろん、これまでも例えば平野甲賀や祖父江慎のブックデザインのように、書籍が持つ「物理的」な側面にフォーカスして、魅力ある書籍が作られてきた例もある。

こうした優れたブックデザインは、その時代の人々の感性を的確に反映してきた。その点において、ブルーライト文芸もまた、現代の人々の感性を、まさに「等身大」に写しとっているといえる。

そして、その感性とは、「エモ」という感性ではないか。本連載でインタビューを行ったペシミ氏は、「エモ」という言葉が、現代の若者の感性を切り取る際の重要な要素であることに触れたうえで、自身のnoteで「エモ」という感情についてこう書いている。

エモは他人とのシェアに長けている。自分の経験や記憶に関係なく、ある一定の条件が揃えばエモさは発生し、それはほとんどの人にとって理解可能となる(「『エモいとは何か』を総括するー四象限分析、価値反転作用、ブルーライト文芸、物語性、エモ映画、エモ消費」)

SNSが普及し、価値が多様になった現在において、他人とのシェアがしやすい「エモ」が若者にとっての重要な感覚として浮上してくる。

また、この引用にあるように、「エモ」を感じやすい要素には「ある一定の条件」がある。それが、「青空」であったり、「青春」であったりするのだが、こうした要素をブルーライト文芸は読者に寄り添うことによって自然と取り入れている。だからこそ、現代の若者に圧倒的に支持される文芸ジャンルなのだ。

その意味で、ブルーライト文芸のムーブメントは、それがいったいなんなのか、本気で取り組んで考える価値があると思う。

さまざまな展開を予期させながらも、現在の書店空間を賑わしている「ブルーライト文芸」。まだまだ誕生したばかりの言葉でこれからどうなるかはわからないが、そこには現代の書店空間、そして現代に生きる私たちが考えるヒントがたくさん詰まっているのである。

勃興するブルーライト文芸
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谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

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