危機を迎えるたびに「より強くなる」100年企業 元中小企業庁長官が語る「老舗の耐久力」

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――ゼブラ企業や100年企業は理念こそ立派ですが、事業を100年続けるのは大変です。秘訣はどこにあるのでしょうか。

100年企業には危機を何度も乗り越えてきた耐久力、レジリエンスが備わっている。そのことが今回、帝国データバンクに依頼した調査によって明らかになった。

前田泰宏(まえだ・やすひろ)1964年生まれ。東京大学法学部を卒業して通商産業省(現経済産業省)入省。ものづくり、自動車、素形材、サービス、コンテンツ等を担当。東日本大震災を契機に企業や人間の生命力に関心を持ち、「100年経営の会」の設立に尽力。2019年に中小企業庁長官に就任。2022年に経産省退官。企業十数社で顧問。シン・ニホンパブリックアフェアーズで100年経営アドバイザーを務める(撮影/梅谷秀司)

帝国データバンクは2008年、創業設立から100年が経過した企業のうち決算書を入手した1913社を分析して『百年続く企業の条件』(2009)という本にまとめている。

今回、分析対象としたのは2008年当時のデータと、2021年度の100年企業7582社、全業種企業24万3399社だ。

まずは2008年当時の、100年企業と全業種企業の平均値を比較してみたい。

本業の儲けを示す売上高営業利益率は100年企業が1.88%、全業種が1.91%で全業種のほうが高かった。一方、本業以外の収益を含めた売上高経常利益率になると100年企業が2.04%、全業種が1.90%で、100年企業が上回った。100年企業は土地や建物など蓄積した資産を活用しているケースが多く、本業以外の収益(営業外収益)が経営を下支えしていた。

100年企業が逆転していた

――2008年からのリーマンショック、2020年からは新型コロナウイルス禍と、大きな危機がグローバル経済を襲いました。2021年度、両者はどうなったのでしょうか。

調査をした2021年はコロナ禍のまっただ中で、多くの企業が業績悪化に苦しんでいたが、驚く結果が出た。

売上高営業利益率は100年企業が1.07%、全業種は▲0.02%で2008年当時から100年企業が逆転した。売上高経常利益率は100年企業が3.05%、全業種は2.50%と当時の差がさらに広がっていた。2008年当時と変わらないのが土地・建物といった営業外収益の存在だ。本業が苦しい時には、やはり営業外収益が経営を下支えしていたことがわかる。

もう一つ目を引いたのが、経営の安定性を示す自己資本比率だ。2008年当時、100年企業の自己資本比率は28.65%、全業種は26.81%と大差がなかったが、2021年度には100年企業36.76%、全業種は26.91%と実に10ポイントも差が開いた。

リーマンショックやコロナ禍をへて、100年企業はより強くなっていたということだ。100年企業はレジリエンス(危機対応力、基盤の安定力)が高いということがわかった。

100年も事業を継続するうえで、もう一つ重要な要素がある。それは「美意識」だ。

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