日本の季節行事は「食品廃棄の温床」という現実 外国人が驚く「商品の種類」とパッケージの美さ

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バレンタインデーで全国民もれなくチョコレート!のような風潮も日本だけの特殊な現象だ。1930年代に「モロゾフ」がバレンタインデー向けの広告を出したのが始まりだとか、1958年にチョコレート会社「メリーチョコレートカムパニー」がバレンタイン用のチョコレートを作り始めたのだという説はもはや有名で、キリスト教世界の本物のバレンタインデーと違っていようがなんだろうが、世界中の美味しいチョコレートが日本に居ながらにして手に入るのだから、それでいいのだ、といったところだろう。ちなみにイタリアでは、フランスやベルギーなどお隣の国の高級チョコレートが簡単に手に入る、なんてことはあまりない。自分の国で作られたチョコレートが一番美味しいと誇りに思い、食べている人がほとんどだ。

イタリアのバレンタインデーは、「恋する人たちの日」として若いカップルから老夫婦までが花束やちょっとした物をプレゼントしあい、お祝いする。特にチョコレートと限らず、好きなものを好きなように贈るし、女性から男性へ、という決まりもない(むしろ男性から女性へ、というケースの方が主流に見える)。最近では「どうも日本ではバレンタインデーにチョコレートが爆売れするらしい」と聞きつけた商売人たちが、バレンタインにかこつけたハートのチョコレートなんかを売ったりしているが、かつての日本で繰り広げられた義理チョコだの本気チョコだの、そういう風習は生まれてこない。

フードロスの問題だけではない

大量廃棄といえば、クリスマスになくてはならないイチゴのショートケーキだ。生クリームやイチゴという、新鮮さが命の食材が使われているから日持ちがしない、だからフードロスの危険が大というだけではない。本来は春が旬のイチゴを真冬に栽培するために、重油を使って温室の温度を上げるからカーボンフットプリントがものすごく高い、というのは記事(3年ぶりに帰国した日本人が驚いた「ヤバい日本」)に書いた通りだ。

イタリアではクリスマスシーズン中ずっと、パネットーネやパンドーロという発酵生地のケーキを食べる。昔、小麦粉がとても貴重だった時代に、クリスマスのお祝いに食べる大切なご馳走として生まれたケーキだから、日持ちがするようにできている。「パネットーネなんて、あんなにまずいものをよくイタリア人は食べるね」なんていう声を時々耳にするが、それは輸出用の大量生産極安商品を「イタリア直輸入の高級菓子!」とかなんとか騙されて食べた不幸な人たちの意見で、これも日本が食をビジネスのネタに荒稼ぎしまくっていることの弊害かもしれない。天然酵母を使って丁寧に手作りされる本物のパネットーネは、イタリアで買ってもとても高価で、シンプルなのに毎日、毎年食べたくなる美味しさだ。賞味期限は3カ月ぐらいあるので、売れ残っても廃棄されることはない。

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