日本の季節行事は「食品廃棄の温床」という現実 外国人が驚く「商品の種類」とパッケージの美さ

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農林水産省のサイトに公開されているデータによると、日本では1年間に523万トンもの食料を廃棄しているという(2021年度推計)。国民全員が、1年間毎日114g、おにぎり1個分の食べ物を捨てていた計算になるという。一方私が暮らしているイタリアの廃棄量は、1人当たり年間75g。パスタの1人前が100gとするなら、イタリア国民全員が毎日、1皿のパスタを4分の3も捨てている、そんなイメージだ。ヨーロッパではイタリアより多く捨てているのはドイツとフランスだけだという。

以上のデータを見てみると、「日本は先進国の中で食料廃棄が多くて、遅れているんじゃないの?!」と言いそうになる。先進国、と条件をつけるのは、途上国の場合は家庭やレストランなどでの廃棄よりも、生産過程や保存の過程で設備、輸送施設の問題から食料がダメになってしまうケースも少なくないというからだ。だが世界の経済大国の中で、特殊な食環境にあると思える日本を他国と比べてみると、本当に日本は廃棄が多くてダメダメなのか?という疑問も湧いてくる。日本の特殊な食環境の具体例と共に、私が暮らしているイタリアの例を交えて、比較考察してみたいと思う。

スーパーの店内
トリノのあるスーパーマーケットのパスタ売り場。両側ともぎっしりパスタが並んだ商品棚は、さすがパスタの国。かつては豊富にあるという安心感から、イタリアの家庭ではパスタやパンの廃棄が多かったという。フードロス問題が多く語られる昨今、捨てない工夫をする人が増えているそうだ(筆者撮影)

日本の季節のイベントは食品廃棄の温床

2月の恵方巻き、バレンタインのチョコレート合戦やクリスマスケーキなどなど、経済効果、巨大な利益を狙ったマーケティング戦略に踊らされて、市場を賑わす商品が日本には溢れかえっている。

日本中が大騒ぎをして買い、食べまくり、挙句毎年廃棄が問題になる恵方巻きは、そもそも日本の節分の伝統食ではなかった。私は27年前からイタリアで暮らしているが、東京で生まれ育った私が日本で暮らしていた頃に、恵方巻きを食べたり見聞きした記憶はない。調べてみると発祥には諸説あるのだが、大阪あたりの花街から生まれ、それを広島県のセブン-イレブンが「恵方巻き」という名前で1989年に販売を開始、爆発的に人気を博し全国に広まっていったのだという説が有力ということだ。

魚や卵などの具材も入っているから、売れ残れば廃棄の運命が待っている。それでも一本でも多く売りたい企業側は、日付が変わるギリギリに買いに来る客にも対応できるよう多めに生産し、商戦を盛り上げる。その影響で恵方巻きの廃棄が社会問題になったので、最近は予約販売にシフトした意識の高い企業も出てきた一方、コンビニの社員が売れ残りを自腹で買わされ、売れ残りがなかったかのようにカモフラージュをする、などという惨事も起きているようだ。

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