父親の心得は「スター・ウォーズ」に学ぼう

現代日本の父親とダース・ベイダーの共通点

ジェダイ・マスターであるマスター・ヨーダは、「死は生の一部である。受け入れなければいけない」と説くが、アナキンは聞き入れない。逆に暗黒卿は、「ダーク・サイドの力があれば、愛する者を救えるかもしれない」とアナキンをそそのかす。

愛するパドメを守りたい一心で、アナキンは、暗黒卿の言いなりになる。文字どおり、悪魔に魂を売り渡してしまったのだ。暗黒卿の命令に従い、アナキンは、ジェダイを次々と殺してしまう。子どもまでも殺してしまう。またもや独善的な愛が、アナキンの正義を歪めてしまったのだ。

結局、正義を失ったアナキンに対し、パドメは「もうあなたにはついていけない」と告げる。「キミのためにすべてを捨ててここまでやってきたのに、なぜだ?」。アナキンはパドメにまで裏切られた気持ちになり、パドメを窒息させてしまう。悲しみのあまり、パドメも生きる気力をなくし、出産後、命果てる。

現実社会に似たスター・ウォーズの構図

苦しいほどにまっすぐすぎる愛がもたらした悲劇である。しかしこの悲劇にデジャヴ(既視感)を感じるのは私だけだろうか。映画の中ではない。現実社会の中に、これとそっくりな構図がある。

「愛する者を助けたいのなら、私の言うことを聞きなさい」という暗黒卿のささやきは、「子どもができたのか。では、ますます仕事をがんばらなければいけないね」というセリフに似ている。愛する者を守るため、どんな命令にも従うという態度は、家族の生活のために理不尽にも目をつむりながら必死に働く者たちの態度に通じる。

愛する者のためにしている努力が、結局、愛する者を傷つけ、愛する者を遠ざける結果をもたらすというジレンマ。どこの家庭にも起こりうる身近なジレンマを、ジョージ・ルーカスは、壮大な宇宙の物語の中に織り込んだ。そう考えると、ダーク・サイドとは、仕事優先の価値観のメタファーであるととらえることができる。

人間にかぎらずあらゆる生命は、子孫に命をつなぐために進化してきた。つまり、子どもを産み育てることは、生命として最も重要な営みであるわけだ。生き延びて、子どもを産み育てるために、私たちは日々の糧を求めてさまよう。つまり仕事をする。命をつむいでいこうとする―すなわち広い意味での「母性」こそが、私たち生命のメインストリームを成すものであり、仕事は本来のメインストリームではない。

しかし、現在の社会では、明らかに子育てよりも仕事を優先する経済至上主義的価値観がはびこっている。仕事こそがメインストリームであり、子育てはその合間を縫ってすべきことというようなニュアンスがある。生命の普遍的な真理とは正反対なのだ。

現代社会のこの本末転倒な状況は、ジョージ・ルーカスの描くダーク・サイドに映る。暗黒卿とは、経済至上主義的、全体主義的、独善的な社会的価値観の象徴であると考えられる。

そう考えると、壮大な宇宙を舞台に繰り広げられる物語が、急に身近なものに感じられはしないだろうか。

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