大阪交通事情、「55割」の次は空飛ぶタクシー? 「タクシーの現場はカオス」 ②大阪編
こう断言するのは、ワンコインタクシーグループの代表とワンコインタクシー協会の会長を兼任する町野革氏(51)だ。町野氏によれば、大阪のタクシー不足のピークは昨春から夏にかけてだったという。
筆者は2023年に何度か大阪を訪れたが、確かにタクシーはかなり利用しにくい状況にあった。新大阪駅前のタクシー乗り場では、優に50人を超える行列が生じ、乗車まで30分以上を要した。
また、夕刻の中之島付近ではホテルでもタクシーは来ず、流しは一向に拾えない。ようやく拾えたタクシーの運転手は、こんなことを話した。
「市内中心部で、日中に流しで捕まえるのは困難です。今は日中のお客さんは7、8割が外国人。彼らは大阪城や海遊館、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン近くなど、私たちが普段行かない場所から乗る。ドライバーもそれがわかっているから、そこを狙う。ドン・キホーテの袋を両手に持った3~4人グループを見かけると、『チャンスだ』と(笑)。もはや大阪はインバウンドで成り立っている街ですわ」
2024年に入って改めて大阪を取材すると、ターミナル駅での行列や夜間でのタクシー不足は幾分、解消されているようにも映った。街中でタクシーを拾っても、ネガティブな声はあまり聞こえてこない。タクシードライバーの視点に絞れば、タクシー業界をとりまく状況は劇的に改善されつつあった。
大阪ドライバーの年収は東京上回る全国1位!
大阪タクシー協会によれば、2023年12月の平均日車営収は4万2693円となった。これは2年前比で実に8000円近い上昇となる。
また全国ハイヤー・タクシー連合会によると、大阪のタクシー運転手の年間推計賃金平均は437万円(2022年度調査)。何と東京をも上回り、全国1位となっていた。
市内の複数の企業を取材する中、個別の月間売り上げを確認したが、2023年12月は200万円を超える者すら散見された。これらの数字はドライバー不足の影響が多大で、台数が減って仕事量が増えたことが、個々の売り上げ増につながっていることを示唆している。
そんな背景もあって前出の町野代表は、タクシー不足の根幹にあるのは「企業努力不足」と結論づける。稼働率ほぼ100%を保っている同グループの強みを同氏が解説する。
「110社以上のタクシー会社がある大阪で、しっかりと人が採れているのはわずか10社ほど。現在の売り上げで考えると、人が集まらないほうがおかしい。タクシー業界は慣習的に求職者視点が欠けており、同業間でも『人が集まらない』という愚痴も耳にする。
ただ、それは一言で言うなら努力不足。ウチのグループには昨年1年間で50人以上が入社しています。増員できた理由はシンプルで、売り上げや月収をデータとして明示できたこと。そんな当たり前の努力を怠る会社が多いのも現実です」
では現場目線では、タクシー不足をどう感じているのか。弁天町で出会った歴45年の78歳ベテランドライバーはこう打ち明けた。
「ウチの会社はコロナ禍でも全額、給与保証をしてくれた。だから人がほぼ辞めなかった。でも9割以上の会社は、そうでなかったわけ。ドライバー同士でそういう評判は回るから、ウチや保証をしてくれた会社に人が集まるようになった。昨年5月の値上げや深夜の“安売り”が消えたことも大きくて、この年でも隔日勤務で平均8万円ほど売っている。ようやく食べられるようになったわ」
2025年に大阪・関西万博を控える大阪では、影響がタクシーにも及んでいる。吉村洋文・大阪府知事は万博開催に合わせてライドシェアの必要性を訴えており、タクシー業界からは反発の声が大きい。
なんばでタクシーに乗車すると、ドライバーは「万博で街が盛り上がっていると感じることはありまへん」とため息混じりにいう。商店街などを散策しても、「見切り発車が過ぎる」などの冷ややか意見も目立った。
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