「給料よし、残業なし」の会社を社員が辞めるワケ 心理的安全性よりも重要な「キャリアの安全性」

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彼等・彼女等に話を聞くと、職場の環境や給料に不満があるわけではない。残業もほとんどない。上司も自分のことを気遣ってくれるし理不尽な指示もない。

しかし、「このままこの会社で働き続けて成長できるのか」「憧れるような先輩社員がいない」「精気の無い目をして働いている管理職やベテラン社員を見ていると、自分もそうなりそうで怖い」「学生時代にスタートアップで起業した同窓生に後れをとっていて不安」といった将来の不安に駆られて、離職を決断する若手社員が増えているのです。

一番大事なのは「自分が成長できるかどうか」

アメリカの心理学者、フレデリック・ハーズバーグが提唱した「二要因理論」というモチベーション理論では、職場には不満を取り除く「衛生要因」と満足を高める「動機付け要因」が必要とされています。

福利厚生や就業環境を整備して「心理的安全性」を高め現在の不満を取り除く「衛生要因」対応だけでは不十分で、将来の展望やキャリア形成を支援して「キャリアの安全性」を高め将来の不安を払拭する「動機付け要因」対応が重要です。

「キャリアの安全性」という表現をしますが、「この会社で働き続けて、将来の展望は開けるのか」「キャリアを成長させるために周囲からのアドバイスや支援を得られるのか」「ロールモデルになる先輩社員がいるか」「社外からも評価される人材に成長できるか」「教育研修や業務経験を通じて成長する機会はあるか」などに対する環境が整えられていなければ、不満のないホワイトな職場でも不安を感じた若手は2、3年で離職します。

昭和の時代は、「石の上にも三年」どころではなく、5年、10年辛抱するのは当たり前でした。終身雇用制度で定年まで働くのが前提のキャリアプランだったため、時間的に余裕があり、本人も上司も「今は大変でも、40代で課長、50代で部長を目指そう。給与も上がる」という期待があったからです。

ところが現在は、日本全体が右肩上がりの経済成長ではなくなり、終身雇用制度が形骸化し、早期退職や希望退職も一般化し、会社そのものも定年まであるかどうかわからない時代です。

だからこそ、定年まで勤める前提ではなく、あくまで自分の将来のために、大手の知名度の高い会社や教育制度の整った会社をキャリアのスタート地点として選ぶという人たちが増えてきているのです。

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