「給料よし、残業なし」の会社を社員が辞めるワケ 心理的安全性よりも重要な「キャリアの安全性」

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どれも上司からすれば部下に必要な情報ですが、部下からすれば「自分が必要としているタイミングと内容」に限り必要な情報です。「馬を水辺に連れていくことはできても、水を飲ませることはできない」という諺がありますが、喉が渇いていない相手に水を大量に持参しても価値がありません。

最初に必要なことは、若手社員のナラティブを過去・現在・未来で立体的に把握することです。

過去とは「なぜ、この会社を選んだのか」「就職活動では、何を大事にしてきたのか」という入社動機や価値観です。

話を聞く際のポイントは、「ポジティブではないことも話しやすい雰囲気づくり」です。仕事や職場の人間関係への不満は、上司にとっては自分がダメ出しされているような気持ちになるので「そんなことはないよ」「実はこういう良い点があるよ」と部下の発言を否定したくなりますが、そうすると部下は本音のナラティブは封印してしまいます。

まずは、「この若手社員は、こういう視点で仕事を捉えているのか」「上司からは気づかなかったが、職場にこういう不満があるのか」「会議ではわからなかったが、あの分野に興味があるのか」など、素直な気持ちで傾聴しましょう。

そのうえで未来の展望を確認します。「将来、どういう状態になれるとうれしいのか」「想定しているキャリアプラン」「社内外で、目指したいロールモデル」など将来的な観点で質問してみましょう。

若手社員の根源的な欲求にアプローチする

ここで引き出したいのは、若手社員の過去・現在・未来にわたるナラティブです。

どういう人生にしたいのか、社会人としてありたい姿はどんなものなのか。ここがわからなければ離職を希望する部下を引き留める以前に「なぜ離職するのか」さえ理解できません。

たとえば、部下の「やりたいこと」が「将来的に独立して、起業する」だったとします。

ここでようやく、「リーダーになってほしい」という会社の期待と「管理職になりたくない」という部下のギャップの原因が明らかになります。

つまり、部下は、「いずれ辞める会社だから、責任の重い仕事はやりたくない。在職中は技術を磨きたい」と考えているのです。

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