NHK元記者が見た「カンボジア医療」超過酷な現実 国際医療NGO「ジャパンハート」の挑戦、驚く実態

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少し補足となるが、カンボジアではいわゆる「カンボジア大虐殺」と呼ばれる1975年から1979年に行われたポル・ポト派による非人道的な大虐殺により、多くの医師が殺害されてしまった

それにより、経験豊富な医師がいなくなり、現在ようやく若手の医師が少しずつではあるが育ってきているという歴史的な背景がある。

だから、「ジャパンハート」に診療に来る人の中には、貧困に加えて、これまで診察を受けたことがない人も多く存在している。

「小児がんの治療」日本では8割以上治る一方で…

小児がんは、日本では8割以上が治ると言われています。けれども、ここカンボジアでは2割程度で、約半数は診断すら受けられていないと考えられています。『ジャパンハート』の病院では手術や抗がん剤治療で救える命が増え、現地の医療者も育ってきていますが、まだまだ厳しい状況です」

生後半年で小児がん(神経芽腫)と闘う女の子

国全体で病院も医師も不足していて、「ジャパンハート」病院に来た時点でかなり症状が進行しているケースも多く、亡くなってしまう子も少なくない。数多くの事件や事故を取材してきた藤田さんでも、心にくるものがある。

「昨日まで楽しそうに話していた子どもが亡くなったり、ここでなくても手術して退院した後に亡くなったことを聞くこともあります。やっぱりつらいですね」

ただ、それでも広報として、「自分たちの活動をカンボジア国内でより多くの人に知ってもらい、『小児がんは治るものだ』と伝えたい」そんな想いが強くある。

卵巣の腫瘍の摘出手術を終え、術後ケアを受ける女の子(12歳)
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