サッポロ社長「3Dは買収家のスティールと違う」 独占取材に「ビール特化方針」の理由を語る

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サッポロHDの尾賀真城社長と松風里栄子取締役
東洋経済の取材に応じたサッポロHDの尾賀真城社長(左)と松風里栄子取締役(撮影:今井康一)
 20年前の悪夢再来か――。ビール大手のサッポロホールディングス(HD)の筆頭株主に、モノ言う株主が躍り出ている。シンガポールの投資ファンド、3Dインベストメント・パートナーズだ。
 1月5日、3Dの持つ議決権比率が16.19%になったことが発表された。3Dは2022年からサッポロHDに不動産事業の売却など経営改革の要求を行ってきており、昨年10月から株を買い増し始めた。
 振り返ると2004年。投資ファンドのスティール・パートナーズがサッポロHDに買収提案を行い、攻防が繰り広げられた。結局、スティールは2010年に株を売却して撤退したが、そこから10年あまりで再びファンドの標的となった格好だ。
 サッポロHDは2月14日、中長期経営方針を発表。不動産事業について外部資本の注入を検討する方針を打ち出すなど、事業再編に向かって大きく舵を切る。尾賀真城社長と経営企画を担当する松風(しょうふう)里栄子取締役を直撃、真意を聞いた。

 

──中長期経営方針で、不動産をコア事業から外す方針を明らかにしました。3Dの要求を反映させてのことですか。

尾賀 3Dとはずっと対話を続けているが、それで今回の結論が導き出されたことは一切ない。酒類事業の収益性が低い点を指摘されたが、それはおっしゃる通りで反省している。一方で、「食品・飲料はやめなさい」「不動産をぜんぶ売ってしまいなさい」と言われても、われわれにそのつもりはない。

今までは酒類、不動産、食品・飲料と3つの事業が併存していた。これからは酒類を中心事業とし、不動産は中心事業(を成長させるため)の一部になるとの考え方だ。

酒類の中核であるビールは国内市場が小さくなっていく。海外も大変だ。じゃあ何もせず今までと同じことをやり続けていいのか。攻めの経営をして、チャレンジをする会社でありたい。それが趣旨となる。

今までと違う戦略を考えるうえで、結論を出すにはもう少し時間がかかるし、これからドラスティックなことが起きるかもしれない。今の時点では、そこまでしか話せない。

恵比寿ガーデンプレイスは売却しない

──不動産事業もあったので酒類事業に全力で挑戦できていなかったと、3Dは指摘していました。

ここ(恵比寿ガーデンプレイス)ができて30年なんです。バブル時代に計画した不動産事業と酒類事業は、お互いに補完関係にあった。不動産に助けてもらったこともあるし、ビールが助けたこともある。ただ、やはり事業内容がぜんぜん違う。

恵比寿ガーデンプレイス
1994年に「ヱビスビール」の醸造場の跡地にできた恵比寿ガーデンプレイス。その売却が検討されるとの報道もあった(撮影:尾形文繁)

この30年はデフレで金利も安かったが、これから金利が上昇したときに3000億円、4000億円と借金をしたら金利負担だけで大変だ。ビールでもう一度勝負しようとなったら、どういう体制になるべきか。いろいろな選択肢をトータルで考えるようになった。

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