人はなぜ、バリエーションを減らしたがるのか?
まず、選択肢が増えれば、そのぶん認知的なハードルが上がるという点があげられる。要は考慮しなければならない要素が増えるのだ。これは大変な作業だ。
人の脳は労力を最小限にとどめるように配線されているので、そうした大変な作業を拒む。買い物客に多すぎる選択肢を提示すれば、その客は何も買わない。
行動モードのときは、意見の多様性は組織の敵になる
だが、それ以上に重要な理由として、バリエーションは、つねに組織の重要事項とされてきた、「行動」の敵になるという点があげられる。
バリエーションが増えることは、思考の際にはメリットになる。逆に、行動の際は、バリエーションを減らすことがメリットになる。
この違いは重要だ。例をあげよう。
●パーツを製造する場合、どのパーツも可能な限り同じでないといけない。製造業にとって、ばらつき(バリエーション)は過失となる。
●潜水艦を動かす乗員は、手順に忠実であることが求められる。手順を勝手に変えるのは違反行為となる。潜水時、「ハッチを閉じる」が先で「潜水する」が次となり、この順序を逆にすると過失となる。
●ファストフード店で出すハンバーガーは、顧客の要望がない限りはどれも同じでないといけない。ファストフード店では標準化が勝つ。
バリエーションを減らす言葉は、結果を重視し、ひとつのことに意識を向けさせようとする。つまり、やり方と手順の厳守を徹底させるということだ。
そのため、「このやり方で実行しろ」や「間違いない」といった言い方になる。
バリエーションを減らすための言葉は、制御と服従を促す。
意思決定(考えること)と実行(行動すること)は種類が異なる仕事であり、バリエーションのとらえ方も正反対になる。
よって、意思決定と実行ではまったく異なる頭の使い方が必要になり、使う言葉の種類も変わる。
あなたも、バリエーションを歓迎すべき時に、それを打ち消すような言い方をしないよう気をつけよう。
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