電力自由化で激突する東電vs新電力の勝敗 卸取引所拡充なら新電力のシェア2割超も

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しかしながら、新電力拡大の制約となるのが、電力の供給力だ。新電力は通常、大手電力からの常時バックアップ供給や部分供給を受けつつ、自社または提携先の発電所から調達したり、卸電力取引所から購入したりして顧客に販売している。その調達電源に制約があれば、販売量拡大にも限界がある。関電や中部電が首都圏へ越境販売するにしても、富士川を挟む東西の電力周波数の違いが制約になる。

「全面自由化後の主戦場は首都圏だが、本格的な競争は2020年代前半だろう」と、岡三証券の山崎慎一アナリストは見る。東京ガスやJXホールディングスなどの新規参入組や関電などの大手電力が相次ぎ関東での火力発電所建設計画を打ち出しているが、稼働するのは20年以降が多い。新設計画ラッシュの石炭火力は温暖化ガスで規制強化の方向にあり、計画見直しも予想される。

卸電力取引所についても、取引量は依然として全消費電力の1%強にすぎない。そのため、「新電力が最大限電源をかき集めても、当面シェア1割強が精いっぱい」(業界関係者)と言われる。

新電力の本命候補とされる東京ガスは、現在行っているエネットなどへの卸売りに加え、家庭向けなどの小売りに参入することで、電力販売量を2020年に首都圏需要の約1割に当たる約300キロワット時(2013年度実績の3倍)まで拡大する目標を掲げている。ただ、同社の広瀬道明社長は「かなり高いハードルだ」とも認めている。新電力の登録は6月10日現在、673社と乱立状態にあるが、そのほとんどは細々と事業を行うしかない状況だ。

東電は利益率の高い上流で競争力強化

東電など大手電力としては、燃料調達と発電という上流部門で圧倒的な競争力を維持すれば、新電力も電源調達で大手に依存せざるを得なくなり、実質的にシェアを維持できるとの計算があるようだ。

「参入障壁が低い小売り部門は利益率が低く、少々シェアが落ちても、利益には響かない。一方、利益率が高いのが参入障壁の高い発電と燃料部門。また送配電部門も将来的に総括原価方式が残り、安定した利益が得られる」(メリルリンチ日本証券の森貴宏アナリスト)。

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