電力自由化で激突する東電vs新電力の勝敗 卸取引所拡充なら新電力のシェア2割超も

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東京電力と中部電力は発電所の新設・更新と新規の燃料調達を統合(撮影:大澤誠)

家庭など低圧分野への新規参入が解禁され、電力小売り全面自由化が実現する2016年4月まで1年を切り、攻守のカギとなる提携戦略の動きが慌ただしい。先行しているのは、福島第一原子力発電所事故の巨額賠償責任で実質経営破綻し、公的管理下にある東京電力だ。

ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を展開するロイヤリティ マーケティング(三菱商事系)とリクルートとの間で、電気料金支払いでポイントが貯まるサービスの提供や、住まい全般にかかわるWebサービスの開発に向けた業務提携に合意。「Tポイント」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブとも手を組んだ。

また、電力と通信のセット割引販売や、スマホを使った電力消費量の「見える化サービス」提供などを視野に、移動体通信のソフトバンクモバイルと全国規模での提携に向けた交渉を開始。現行の東電管内である首都圏では、守りを固めるため、NTTドコモ、KDDI(au)とも提携を協議している。

さらに、静岡県や関東などでLPガスや通信、CATV、宅配水事業を展開するTOKAIホールディングスとの間で、電力供給や電力とのセット販売へ向けた検討を開始。自由化済みの高圧法人向けでは、年内にもLPガスとのセット販売を始める方向だ。同様に、LPガスで関東首位、都市ガスで関東3位の日本瓦斯とも連携を協議中。すでに高圧法人向けではLPガスと電力のセット販売で協業を開始している。

「やみくも」とも揶揄される東電の提携加速の背景

「全面自由化後もお客さまに選んでもらえるよう、電力の親和性を踏まえて、いろんな会社とバンドル(組み合わせ)サービスの話をしている」と東電の広瀬直己社長は言う。提携相手がさらに増える公算は大きい。

こうした東電の提携戦略は管内の顧客を囲い込み、管外の新規顧客を獲得する手段だ。東電株が急騰したように、株式市場では前向きに評価されている。

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