電力自由化で激突する東電vs新電力の勝敗 卸取引所拡充なら新電力のシェア2割超も

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来年から低圧分野へも参入する意向を示しているエネットの池辺裕昭社長は、「家庭の場合、ピークカットなどの節電効果を含めて、10%を超える料金低下効果は出てくる」と見る。「生産が優先される企業と比べ、家庭の場合は融通が利きやすい。昼間の電気料金が高いときにアイロンがけをする必要もない。需要ピーク時の節電によってポイントがたまり、電気料金が安くなるのであれば、工夫して節電しようという家庭も増えるだろう」(池辺氏)。

プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が行った一般家庭の消費者対象のアンケートによると、現行の電気料金に対して10%安いと約4割の消費者が電力会社の変更を検討すると回答している。20%安いと、7割以上が変更を検討するという。基本料金だけで1割値引きは難しいとしても、節電によるポイント還元を含めた値引き戦略が顧客獲得の決め手となりうる。

もっとも、大手電力も提携などを通じ、対抗値引きに出るのは必至。東電の場合、柏崎刈羽原発が動けば値下げ余力が増す。結果として、新電力との料金格差がなくなれば、契約変更は起こりにくい。消費者の間では、「新電力に替えると停電が起きやすくなるのではないか」との"誤解"も多いと見られる。実際には、新電力に契約を切り替えても、従来と同じく大手電力の送電線網を使うため、安定供給に変わりはない。ただ、料金にあまり差がなければ、そうした誤解や不安が消費者を現状維持にとどめる要因となりうる。

新電力拡大の制約となる供給力

一方、再生可能エネルギーや非原発をアピールする新電力も、消費者から一定の評価を得そうだ。ある大手電力関係者は「A紙やT紙など、反原発派が多い新聞読者のつなぎ留めが課題」と苦笑交じりに話す。

国内外の公益業界事情に詳しいアクセンチュアの宮脇良二マネジング・ディレクターによると、たとえば米国のワシントン・ガスというガス会社が風力発電など「グリーン電力」をアピールして成功を収めている。日本でも、ソフトバンク傘下の新電力SBエナジーなどが太陽光、風力発電所の建設、事業譲受を含め、再エネを前面に押し出して基盤拡大を図っている。日本生活協同組合連合会も新電力の地球クラブを設立し、原発に頼らない電力供給をグループ内で開始しており、今後の展開が注目される。

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