自衛隊員の命は、ここまで軽視されている

海外派遣の前に考えるべきこと(上)

日本政府は、自衛隊員が戦闘によって死傷することを想定していないし、死傷者を減らす努力もほとんどしていない(写真:かとヤン/PIXTA)

国会では集団的安全保障をめぐる論戦が繰り広げられているが、空疎な言葉の応酬による神学論争に明け暮れているようにみえる。どれだけの政治家が自衛隊の現状を正確に把握しているだろうか。

安倍晋三首相も中谷元防衛相も、自衛隊は海外派遣のための準備ができていると主張している。だが、実戦を想定していない現状の装備と訓練で軍事作戦を行う場合、極めて多くの被害を出すことなる。

自衛隊は戦車やミサイルなどの武器こそそろえているが、実際の戦闘を想定していない組織である。そのため死傷者が出ることを想定していないし、死傷者を減らす努力をほとんどしていない。愕然とするくらいの平和ボケである。

ところがその現状をして、防衛省も自衛隊も「問題ありません」と政治家に説明している。このままでは政治家の誤った認識で自衛隊が海外に派遣され、多くの隊員が不要に命や手脚を失うことになるだろう。

現実を無視した平和ボケの装備

筆者は3月、「自衛官の『命の値段』は、米軍用犬以下なのか」において、陸上自衛隊の個人用ファースト・エイド・キットを例に挙げ、自衛隊の衛生装備が、いかに現実を無視しているかを指摘した。

数年前まで、陸自の個人用ファースト・エイド・キットといえば、包帯が2本だけだった。これは第2次大戦と同じレベルであり、先の東日本震災後にその「戦訓」を取り入れて諸外国のような個人衛生キット、「個人携行救急品」を平成24年度予算から配備しはじめたばかりである。

だがこれには国内用と国外用があり、国内用は止血帯と包帯だけだ。充実している国外用ですら米軍のものから大きく遅れていることを報じた。筆者はこの件について防衛省が行った大臣会見で中谷防衛相に質した。

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