社員の意識の低さを嘆く「残念な経営者」への直言 まず「会社が社員に強いているムダ」をなくそう

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私はこれまで、多くの企業の「時短」に取り組んできました。

最初の機会は、30年以上勤務した電通で、4年間グループ会社に出向したときです。そこで利益率を向上させつつ、残業時間を大幅に短縮するという経験をしました。

その後、電通本社に帰任し、労働環境改革プロジェクトに参加。2年間で残業時間が半分以下に激減していくのを目のあたりにしました。

4年前に独立してからは、コンサルタントとして企業に「時短から始める企業改革」のアドバイスをしています。

まずは「会社が社員に強いているムダ」をなくせ

その手法はシンプルで、以下の3つを、「経営陣に」口をすっぱくして言い続けることです。

①時短は「社員のムダな動きをやめさせる」ことではない
②時短は「会社が社員に強いているムダをなくす」ことである
③時短は「会社から社員への最高のもてなし(リスペクト)」である

考えてみてください。入社したその日から、「これから定年まで、いかにムダに時間を浪費してやろうか」と考えている社員なんていません。

しかし会社の「お作法」を叩き込まれるうちに、「なるほど、会社の求めるムダを、イヤな顔ひとつせずこなしていくことが、いちばん大切なんだな」と気づきます。いつしかその社員も「会社が強いるムダ」に多くの時間を割くようになり、そして後輩たちにも「ムダのお作法」を教える側に回ります。

そこにある日突然、あなたのような経営陣から「わが社も時短しなければならなくなった」と言われる。「自分たちのムダを列挙しなさい、そしてそれらをやめる方法を自分たちで考えなさい」と。

社員のみなさんが「ハイわかりました、私たちのムダはこれこれです、今日からあっさりやめます」などと、素直に従うはずがありません

ほとんどの社員は、入社以来これまで長年をかけて、というか文字どおり会社員人生を懸けて、ご自身たちを「会社が求めるムダ」に最適化することに専念してこられたのです。急にそれを否定されて、二つ返事で応じられるはずがありません。

次ページ自分を棚に上げ「社員の意識不足」を嘆く残念な経営者
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