売り上げが50倍に「卵かけご飯」600円のアイデア 愛知県新城市の道の駅「もっくる新城」の戦略
議員秘書となって7年が経った頃、豊根村へ戻り両親から漬物店を継ぐこととなった。ところが、当時の豊根村の人口は約1200人。しかも、その多くは高齢者でまったく商売にならなかった。販路を広げようにも都市部にある漬物メーカーには太刀打ちできず、設備投資などで作った借金だけが膨れ上がっていった。
2011年頃、愛知県高浜市にある「おとうふ工房いしかわ」の石川伸社長から、名古屋鉄道(名鉄)のグループ会社が新城市に道の駅を開設するという話を聞いた。
「『おとうふ工房いしかわ』は、豆腐や大豆を使ったパンやスイーツの製造販売を手がけていて、以前から石川社長にはお世話になっていました。名鉄から道の駅で豆腐の工房を出してみないかという相談を断って、私を名鉄に紹介してくれたんです」(田原さん)
とはいっても、漬物店の店主として紹介したのではなく、土地勘のない名鉄の担当者に新城市や周辺の東三河エリアを案内できる人ということで白羽の矢が立ったのである。しかし、担当者とともに東三河の街を巡っているときに「道の駅の駅長になって地域に貢献してほしい」と頼まれた。田原さんは家業を清算し、道の駅を運営する名鉄ミライートの社員となった。
卵かけご飯モーニングで売り上げが50倍に
2015年3月に道の駅「もっくる新城」が開業し、駅長としての仕事が始まるも、田原さんの心には引っかかるものがあった。会社や地域にとってプラスになることをなかなか実現することができなかったのだ。
「2016年2月に新東名の新城インターが開通するにあたって、朝、ここでルートの確認をしたり、プランを練ったりするだろうと思って、モーニングサービスをやりたいと思いました。新城は卵の生産量が多く、当時、道の駅でいちばん売れていたのも卵でした。そこで卵かけご飯食べ放題のモーニングを提供すれば注目を集めるだろうと」(田原さん)
ところが、それも会社側は生卵による食中毒のリスクを考えて、NGを出した。それでも田原さんは引き下がらず、加熱して半熟卵にして出すことを提案した。田原さんの熱意に会社側も承諾し、新東名の新城インターの開通に合わせて卵かけご飯モーニングを提供することとなった。それに伴い、開店時間も9時から8時にした。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら