再び『ヤバい日本経済』になるかもしれない 10年前と似た楽観ムードが訪れようとしている

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そういえば、山崎さんとはお酒と競馬の付き合いは多かったけれども、一緒にカラオケに行ったことは一度もなかった。岸本ママに山崎さんの持ち歌を尋ねてみたら、「椎名林檎の『歌舞伎町の女王』」だと教えてくれた。それって、「♪ママは此処の女王様~生き写しのようなあたし~♪」ってやつだよね。椎名林檎は好きな歌手だけど、歓楽街の歌とは山崎さんらしくない。いや、らしいのかな。

岸本ママによれば、「元ちゃん、歌がうまいのよ。高音も出るし」って。そうか、それは1回くらい聞いてみたかった。でも、もう間に合わない。人が死ぬっていうのは、そういうことなんだ。だから「サヨナラだけが人生だ」って言うんだよな。

山崎さんとぐっちーさん(山口正洋さん)、3人でこの連載を始めたのは2012年秋のことだった。まさかこんなに長く続くとは思ってもみなかった。

2014年の『ヤバい日本経済』で予想していたこととは?

特に思い出深いのは、2014年夏に東洋経済新報社から3人の座談会本『ヤバい日本経済』を出版したときのことだ。今になって本書を読み返してみると、意外と面白い。オヤジ3人によるホンネの放談会で、あっという間に読み終えることができる。さすがに現物はもう売っていないけれども、キンドル版はまだ買えるようだ。

「女性の労働力を掘り起こせ」とか、「観光産業は日本の有力な経営資源」といった指摘は、10年前にしてはいい線行っていたと思う。「日本国債は暴落しない」「米国経済は強いが、中国経済は危うい」「新興国バブル崩壊後に、もう一度先進国の時代が来る」などの予言も、大筋で当たったと言っていいだろう。ただし「手金で買っているから、中国の不動産バブルは崩壊しにくい」という予測は、さすがに10年もたつと有効性を失ってしまったようである。

だんだんと思い出されてきたけど、この本が出た2014年当時はまだリーマンショックと東日本大震災の爪痕が深くて、日本経済の先行きは楽観しにくかった。何しろ「100年に一度の金融危機」と「1000年に一度の天災」のダブルパンチだったからね。

しかし2013年から始まったアベノミクスで、株価は上がり始めていた。円高是正も進んだので、経済界にも明るさが見えてきた。この勢いはホンモノなのだろうか。『ヤバい日本経済』の「ヤバい」とは危ないという意味ではなく、「最近の若者コトバでいうところの『凄い』という意味だ」と前書きにも書いてある。アベノミクスを契機に、日本経済は久々に本格的な上昇気流に乗ることができるのではあるまいか……。

ただし10年後の今から振り返ってみると、この本の「キモ」の予言は外れたことになる。この10年間の日本経済は、実質成長率で見ると年平均で0.5%程度にすぎない。超・金融緩和政策だけでは、物価目標2%を達成することはできず、日本経済に本質的な変化をもたらすこともできなかった。その間に少子・高齢化は確実に進行し、われらが通貨・円の実力も甚だしく低下してしまったようである。

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