しかし2024年になってみると、あの当時と似た楽観ムードが再び訪れているようにも見受けられる。日本経済は新型コロナウイルスによるパンデミック(感染爆発)を体験し、久々のインフレに見舞われた。ウクライナとパレスチナという2つの戦争に直面し、米中対立下で経済安全保障の問題にも対応しなければならない。
2024年は『再びヤバい日本経済』が訪れる?
それでも日経平均は、現在は3万6000円前後で推移している。2014年末(1万7450円)のほぼ倍に当たる。ここからあと1割も上昇すれば、バブル期の史上最高値(3万8915円)も超えてしまう計算になる。
どこに変化があったのか。察するに名目GDPが伸びるようになったことであろう。昨年7~9月期時点の名目GDPは595兆円。ほぼ600兆円の大台に達している。物価が上がり、賃金も上がるという環境下においては、企業部門の自由度は一気に高まる。そしてまた政府の税収も史上最高になるというオマケつきである。
家計部門から見れば、物価上昇を伴う景気回復はあまり歓迎ではない。だから「コロナ明け」にもかかわらず、個人消費は冴えないままで、インバウンド消費だけが頼りという状態が続いている。それでも今年、「物価と賃金の好循環」が軌道に乗れば、「30年来続いてきたコストカット型経済から、持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済へ」(岸田文雄首相)の転換が現実に近づくかもしれない。
もちろんこの先には、さまざまなハードルが控えている。まずは3月の春闘で順調な賃上げが行われねばならず、日本銀行の金融政策正常化もつつがなく行われる必要がある。そのうえで「金利のある経済」に復帰するためには、海外経済が巡航速度で推移し、さまざまな地政学リスク(最近はやりの「もしトラ」も含む!)が具現化しないことが望ましい。
かなりのナローパスではあるが、2024年は再び『ヤバい日本経済』が訪れているのではないだろうか。いや、たぶん同じ連載陣のオバゼキ先生(小幡績・慶應義塾大学大学院教授)は、こういう見方には反対なさるだろうけれども。
なにより名目で成長する経済においては、金融資産をそのままにしておけば確実に目減りしてしまう。デフレ下においては「キャッシュこそ王様」であったが、すでに2022年、2023年と2年連続でコアCPI(生鮮食品を除く総合)は2%を超えている。だったら投資家は急いで資金を動かさねばならない。今年1月1日から始まった新NISAは、確実にそうした動きを加速しているようだ。
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