同志社大学・太田肇教授の新モチベーション論(第5回)--改善活動の中に表彰制度を取り入れた藤枝市役所
前回まで、民間企業の表彰事例を取り上げてきたが、今回は役所の事例を取り上げてみたい。
このシリーズを始めるに当たり、表彰によって個人のモチベーションを引き出し、組織の活力を高めていきたいという狙いがあった。「出る杭を打つ」伝統的な日本の組織風土から、一人ひとりの個性や業績をたたえ「出る杭を伸ばす」組織風土へ変えていくのに、表彰という制度が有効だと考えたからである。
かつては伝統的な組織風土といえば、役所こそその典型だというイメージがあった。しかし地方自治の推進、分権化といった大きな時代のうねりの中で、その役所が近年、変わり始めた。変革のツールとして表彰制度を活用しているところもある。
今回は、職員の改善活動の中に表彰制度を取り入れた静岡県の藤枝市役所の事例を紹介しよう。
藤枝市役所では2009年8月から、業務の改善と職員の動機づけを狙った3種類の「一人一改善運動」を実施している。
(1)「改善成果」・・・各課で改善を行い、その成果を報告するもの。
(2)「アイデア提案」・・・市が抱える懸案事項に対する解決策や新しい自由な発想の取り組みな どを、具体的な方法を示し提案するもの。
(3)「アイデア募集箱」・・・自分の課が抱えている課題に対して、広く職員にアイデア提案を募るもの。
すべての職員が、1人1台配置されているパソコン等から、庁内LAN上で「一人一改善運動システム」を稼働させ、改革アイデアや事務改善などの取り組みを閲覧し、いつでも自由に報告やコメントを書き込めるようになっている。