台湾人の「民主」「統一」が中国人とこれだけ違う理由 日本滞在中の中国人記者が台湾で物議を醸している

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若者が「中国と中国共産党は切っても切れない関係にある」と発言すると、王氏はすべての中国人が中国共産党を支持しているわけではないと反論した。

選挙戦で台湾の若者に話を聞いている王氏(写真・自身の番組から)

それに対し若者は、「仮に民主化したくても、実現するのはいつになるのかわからない。中国人の中で覚醒してほしい。台湾を巻き込まないでほしい」と再反論した。

しかし王氏は「今の中国人の多くが共産党の統治を気に入っているわけではない」と食い下がると、若者は「Who cares?」と発言。それは彼らの問題であり「他国」のこと。自分は台湾本国のことにしか興味はないと言い切ったのだ。

台湾の若者が中国人に与えたインパクト

中国人の中では、国の在り方や民族問題は別だと考える人が多い。国を民主的に運営しようが、専制主義的に進めようが、個人のイデオロギーは棚に上げても一体化を希求しようとする。

つまり、民主派、リベラルな立場で中国の民主化には賛成でも、台湾との統一は「当然」と考えている場合があるのだ。方法論として武力を用いるのか、経済的に取り込むのか、あるいは静観するのかの違いしかない。

今日、中国政府が台湾問題でよく発する「台湾を統一することは14億人の思い」というものは、あながち虚構とも言い切れない。

一方で、現在の中国当局の締め付けは、人々により民主化とは何かを考えさせるムードになっているようだ。とくに民主派やリベラルな中国人の中には、今回の台湾の選挙は、中国における民主化の試金石のように扱われており、自らの思いもそこに重ねていた。

しかし、彼ら中国人の前提は多くが「統一」である。台湾の若者の発言は、そんな民主派の中国人らも唖然とさせただけでなく、中国民主化の最後の砦のように捉えていた台湾への思いも、完全に打ち砕くものとなった。

「同じ中国で、われらは中国人」という思いや、実は台湾人もそうだろうと信じていたことが、今の台湾の若者には全くないということが明らかになったのである。しかも映像を通して世界中に拡散されたのだった。

動画を視聴した中国人の一部からは「こうなったら武力でいいから急いで台湾を統一しなければならない」とのコメントが上がっていた。彼らのショックの度合いがどれほどだったか想像できるだろう。

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