台湾人の「民主」「統一」が中国人とこれだけ違う理由 日本滞在中の中国人記者が台湾で物議を醸している
さて、マイクを向けて若者に質問しているものの、この時点で王氏は記者活動をしているとは言い切れない。しかし「1人の海外在住の中国人が台湾でネットメディアによる取材をしている」と思われ始め、それまで王氏にあまり注目していなかった台湾人も目を向けるようになったのだ。
そのように王氏が注目を集めつつあった中で、事件は起きた。
王氏は1月22日、前述の台湾のネットトークショーに出演した。台湾に対する考えや選挙戦について問われると、民進党の選挙戦を批判。身体障害者である陳俊翰氏を担ぎ出し「同情票を集めている」と述べたうえに、さらに陳氏の話し方や動作をまねたりしたのだ。
今日、台湾が高度なインクルーシブな社会、多文化共生社会にあることは広く知られている。陳氏を揶揄した王氏の発言は瞬く間に台湾中を駆けめぐり、各界から王氏への批判が相次いだ。
「身体障害者候補は見せ物」と発言
政界でも与野党問わず議員が、その発言や行動は不適当であると指摘。王氏は一時は「自分は間もなく日本国籍を手に入れられる。“日本人”を入国拒否できないだろう」と強気な発言をしていたが、その後は陳氏へ正式な謝罪を申し入れた。
しかし、社会的責任や世論動向に敏感な一般企業はもっと直接的に動く。このトークショーのスポンサーだったドイツのベッドメーカーが出資中止を決定、さらに配車サービス企業もこれに追随したのである。
揶揄された陳俊翰氏は、脊髄性筋萎縮症(SMA、spinal muscular atrophy)を患いながらも、国際法や国際人権法、障害者政策などを専門とし、台湾ではこれらの分野で代表的な法律家だ。
台湾大学で会計学と法学を学び、同大大学院とアメリカのハーバード大学大学院、ミシガン大学大学院で法学修士、さらに同大で法学博士を取得している。
今回の騒動で陳氏は、「自身が揶揄されたことよりも台湾の民主的な選挙がたんなるショーのように思われたことについて受け入れられない」と発言している。
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