台湾に来た中国人配偶者「陸配」がなぜ台湾の政治的問題として浮上したのか、その歴史と現政権の思惑、そして移民・人権問題(後)

頼清徳政権になり状況が一変
しかし、蔡英文総統を引き継いだ同じ民進党の頼清徳政権が発足した2024年からは、陸配をめぐる状況が一変した。頼清徳政権と中国との対立がエスカレートする中で、台湾では中国に関する多くのものに対して嫌悪感、警戒感が強まった。政策的にも社会的にも、その矢面に立たされたのが最も弱い立場にある「陸配」だったと言えるだろう。
現在、陸配が直面している最大の問題が二重戸籍の問題だ。

陸配は、居留証を獲得して8年(現在は6年)経てば身分証を申請できる。この際、中国で戸籍を除籍した証明が必要となる。つまり、台湾籍を取得するときには中国の戸籍を抜く必要があるということだ。
現行の台湾の中華民国憲法は、依然として台湾と中国はいずれも「1つの中国」に属しているという立場に基づいており、両方の戸籍を持っていると二重戸籍になるためだ。
ところが、台湾の陸配に関する法令はそれまで混乱していたといえる。陸配は1980年代末から出現したが、台湾で「台湾地区と大陸地区両岸人民関係条例」が制定されてきちんとしたルールが定まったのは1992年。それまでの間、陸配に関する法律は空白だった。それ以降、台湾籍を取得するときには「中国の戸籍を抜く」と決められた。
審査を経て台湾籍を取得すれば、身分証が発給される。身分証を獲得したら、3カ月以内に中国の戸籍地の公安局に行って除籍証明をもらい、台湾に戻ってそれを提出して、ようやく台湾籍の身分が確認される。3カ月以内に除籍証明を提出しなければ、すでに発行された身分証は取り消される。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら