台湾に来た中国人配偶者「陸配」がなぜ台湾の政治的問題として浮上したのか、その歴史と現政権の思惑、そして移民・人権問題(後)

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もともと台湾社会には陸配に対する偏見がある。しかし、とくに2025年になってからそれがひどくなったという。台湾企業も陸配を採用しようとしなくなり、しかも侮辱的な態度で対応されるケースも増えている。

レストランで食事をしていて中国出身者だとわかると、「もうここで食べないで。料理は持ち帰ってくれ」と言われたという人もいる。

陸配の政治志向は台湾人と同じ

「20年前に台湾に来た陸配たちに聞くと、これほどひどい態度で対応されたことはなかったと言います。『台湾に来たのは、中国で貧しかったからだろう』といった経済的な差別意識がかつては多かった。確かにそれが理由でした」
「今は台湾の人たちも中国人がお金に困っていないことを知っているので、経済的な偏見は少なくなりました。とはいえ、今では政治的な目的で来たと見られます。あなたたちは台湾を統一するために来たのだろうと。これが以前とはっきり違う点です」

最も深刻なのは参政権だ。東南アジアから台湾に嫁いできた女性の中からは、選挙で当選した政治家が出ている。立法委員(国会議員)になった人にはマレーシアやベトナム、カンボジア出身者がいる。しかし、陸配が出馬しようとすると、激しいバッシングが起きる。

「陸配はしばしば、親中だとか、統一派だとかの汚名を着せられます。しかし、陸配を対象にしたある調査では、陸配全体の政治的志向は台湾全体の人たちとほとんど変わらないことがわかっています。台湾には各種の政治的志向がありますが、陸配においてもその分布比率はまったく同じだったのです。共産党を支持する陸配がことさら多いということはありません」

それなのに、陸配は政治的に親中だと疑われる。しかし、同じ疑いが台湾人に向けられることはない。実際に、台湾の政党の中には親中的な政治志向を標榜するものや、中国との統一を支持する政党はたくさん存在する。

しかし台湾人にとってそれは言論の自由、結社の自由の範囲内にあるとみなされる。しかし陸配には、親中・親共産党であってはならないと強いられるのだ。

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