台湾に来た中国人配偶者「陸配」がなぜ台湾の政治的問題として浮上したのか、その歴史と現政権の思惑、そして移民・人権問題(後)
現在こそ、この規定は厳しく執行されているが、実は2004年以前はその執行手順があいまいだったことは否めなかった。要は、当局の行動が「緩かった」ということだ。
そのため、陸配の中には、身分証を取得しても中国の除籍証明を提出しなかった人がいる。そんな陸配に対し台湾当局も厳格に調べなかったため、そのままになってしまったケースが少なくない。
ところが今になって、移民署から相次いで陸配に対し「3カ月以内に除籍証明を提出せよ」と要求されている。
初期に台湾に来た人にとって、中国を離れてもう40年近く経った。変化の激しい大陸で戸籍地の状況が変わっている人もいれば、父母兄弟、親類さえいない人もいる。除籍証明をもらおうとしても、難しい状況にあるのが実状だ。
「台湾での身分を獲得して何十年も経っているのに、それが取り消される。ということは、この身分はいつまでも不安定だということです。気分次第で身分を奪う。そんな政府が信じられますか。奪われた者は世界で孤児になってしまうんですよ」
大陸の状況も一変、証明書取得も困難に
現在、台湾に定住している陸配の多くが20歳前半で結婚し、今は50歳を超えている。彼女たちは経済的な要因でやって来た人たちだ。台湾にいる時間のほうが中国にいた時間より長くなり、すでに台湾での生活に慣れている。
ところが急に政策が変わって「あなたは台湾人ではない」と言われる。このことこそが、陸配を深く傷付けている。とくに公務員として働いている陸配は、仕事を失うことを強く心配している。
こうした中で、冒頭で触れた「亜亜」事件が起きた。単に政治志向や出自だけの問題ではなく、実は台湾に住む陸配たちの言論の自由を大きく傷つけ、人間としての陸配の生存権さえも台湾社会に問うような影響を与えたのだ。
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