海外でも「高齢化社会で経済伸び悩む」最大の原因 労働人口の減少が新たなインフレにもつながる

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高齢化の経済への影響は日本で始まり、急速に世界に広がりつつある。欧米の金利がこれほど長く低水準で推移しているのも、人口変動の影響かもしれない。労働市場に新たに参入する若者の数は減少している。イタリアの25歳未満の人口は、2050年には1980年の半分になりそうだ。韓国でも20代前半の人口が10年前にピークに達し、2050年までには半減すると思われる。

その一方で、わたしたちの経済モデルは自由貨幣〔経済学者シルビオ・ゲゼルが提唱した貨幣制度。時間の経過とともに価値が減るのが特徴〕に近いものを使った延命装置で維持されている。以前は高齢者が老後の資金のために債権を売るので金利が上がると期待することもできたが、今では金利の低下を促すほかの力のほうが強いことが明らかになっている。

民間部門は硬直している

最近「ポスト現代貨幣理論(PMMT)」という言葉をよく耳にするが、この理論によると、公的部門の役割は民間部門が不安定な場合に投資するだけではなく、恒常的に完全雇用に必要なレベルまで需要を増加させることにあるという。

民間部門はあまりにも硬直していて、もはや国の支援がなければ経済を引っ張ることができないからだというのだが、この点は少なくとも部分的に人口動態に起因している。労働市場に入ってくる若者が少なく、出ていく退職者は多く、人口は高齢化している──この3つが重なる環境においては、投資家も労働者も市場が提供する機会ではなく、国が提供する安全に目を向けるようになる。

ゼロ金利あるいはマイナス金利が長く続いた結果、住宅、債券、株式の価格が上昇し、これらを保有している高齢者の富がさらに増加している。高齢者人口は投資に際してより短期で安全な回収を求める傾向にある。

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