海外でも「高齢化社会で経済伸び悩む」最大の原因 労働人口の減少が新たなインフレにもつながる

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高齢者が新事業を始めたり新会社を設立したりすることはあまりない。高齢者はベンチャー・キャピタル・ファンド〔未上場の新興企業への投資〕や株式市場に投資せずに安全な社債や国債を求めるので、その価格が上昇し、利回りは下がる。

資金調達が容易なので政府は財政赤字を出しても前ほどコストがかからない。また政府が財政赤字を出さざるをえない必要性も増していく。人口の高齢化とともに人々は保守的になり、需要も投資も不十分で、国の介入なしには完全雇用を維持できなくなるからだ。新型コロナウイルス感染症の危機はこうした圧力をさらに強めた。

高齢者人口はリスクの低いプロジェクトにより多くの資本を投じるので、経済はますます失速する。これは日本とドイツで実際に起こっていることで、どちらも世界のものづくりセンターとしての評判を失い、低成長に甘んじている。

高齢化が新たなインフレにつながる?

一方、経済学者のチャールズ・グッドハートとマノジ・プラダンは、高齢化の経済への影響について最近別の見方を提唱した。労働力の減少により賃上げ要求が可能になり、それがきっかけとなって新たなインフレスパイラルに向かうとする見方である。日本がそうならずにデフレのまま推移したのは、1990年ごろから中国と東欧が世界経済に参加したことによって世界の労働供給が著しく増加し、日本がそれをうまく活用できたからだという。

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グッドハートとプラダンによれば、インドとアフリカの人口動態は健全だが、中国のように世界の工場になることは難しいと思われ、数億人規模の新しい労働力によるデフレ効果は終わりを告げる。そして世界は労働力不足に陥り、労働者は賃金の引き上げを要求し、それが物価上昇へとつながっていく。

繰り返すまでもなく、人口減少に伴い景気が減速することは間違いないと思われるが、グッドハートとプラダンはその景気減速がデフレではなくインフレを伴うと考えているのである。たしかに世界各地でインフレ率上昇の兆しが見えているが、それが新型コロナウイルス感染症からの立ち直りによる一時的なものなのか、もっと根の深いものなのかを判断するのは時期尚早である。

ポール・モーランド 人口学者

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ぽーる もーらんど / Paul Morland

ロンドン大学に所属する気鋭の人口学者。オックスフォード大学で、哲学・政治・経済の学士号を、国際関係論の修士号を取得。ロンドン大学で博士号取得。ドイツ、英国の市民権を有しフランス語も堪能なマルチカルチュラルなバックグラウンドを持つ。

 

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