沖縄「米軍基地」用地が競売にかけられる驚愕実態 「軍用地バブル」に生じた在庫過多の異変

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価格の下落は人気が高いといわれる那覇空港にも及んだ。昨年10月、同空港内の174㎡の土地が値下げされた。仲介業者によると、約2年前に「63倍」の4720万円で売り出されたが、今回は2回目の値下げで60倍を切る「59倍」の4500万円まで下げたという。

沖縄出身で、那覇空港の土地を3筆持つ県外の投資家は「那覇空港は人気が高かったので、売り出されるとすぐに不動産屋に電話しないと手に入らないこともあった。最近は売れずに残っている物件が目立つ。値段も下がっている」と話す。

那覇空港は約500haの敷地の約5分の1が民有地で、国が借り上げている(筆者撮影)

背景には大量の「在庫」がある。ある不動産会社は、オーナーが自ら買った那覇空港内の2カ所の土地を、それぞれ41分割と8分割にして2022年と2023年にそれぞれ売り出したが、2024年1月14日現在で41分割の土地は3筆、8分割の場所は1筆しか売れず、計45筆が売れ残った状態になっている。

価格は「65倍」なので、現状だとほかの物件に比べて高く見える。いずれも地銀からの融資の担保になっており、売れなくても簡単には値下げができないと見られる。

基地返還後の跡地利用の障害になる懸念も

一方、沖縄の米軍基地は住民が多い本島南部を中心に返還を進めると表明されている。その地主は、代替わりによる相続と軍用地売買で増え続けている。沖縄県によると、米軍基地の地主は2022年3月時点で国や自治体を含めて約4万7000だが、10年前より約1万1000も増えた。

軍用地売買では土地の利用を前提としない細分化が進み、返還を想定していない投資家の地主も多い。太平洋戦争の敗戦で米軍の占領が続き、基地に土地を奪われた沖縄県民が悲願とする米軍基地の返還だが、この状態では跡地利用の障害になる心配がある。

松浦 新 朝日新聞記者

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まつうら しん / Shin Matsuura

1962年愛知県生まれ。東北大学卒業後、NHKに入局。1989年朝日新聞入社。東京本社経済部、週刊朝日編集部、特別報道部、経済部などを経て、2017年4月からさいたま総局。共著に『ルポ 税金地獄』『ルポ 老人地獄』(ともに文春新書)、『電気料金はなぜ上がるのか』(岩波新書)、『プロメテウスの罠』(学研パブリッシング)ほか。

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